今回は、南海トラフ地震、関東地震など、これまで繰り返されてきた「大地震の傾向」を見ていきます。※本連載は、建築耐震工学、地震工学、地域防災を専門とし、全国の小・中・高等学校などで「減災講演」を続けている名古屋大学教授・福和伸夫氏の著書、『次の震災について本当のことを話してみよう。』(時事通信出版局)の中から一部を抜粋し、震災によって起こり得る最悪の事態を防ぐための知識を紹介していきます。

100年程度の「ひずみの蓄積」が巨大地震を引き起こす

南海トラフ地震や関東地震は歴史上、何回も繰り返しています。「将来、来るかもしれない」のではなく、いずれ「必ず来る」のです。

 

伊豆半島を挟んで東側にあるのが関東地震を起こす相模トラフ、西側は駿河トラフ、南海トラフと続きます。いずれも、フィリピン海プレートが陸のプレートの下に潜り込むことによってできた海の中の溝です。

 

南海トラフでは、フィリピン海プレートが年間5、6センチのスピードで北西に進んでいるので、100年程度で5、6メートルのひずみがたまり、それが解放されるとマグニチュード(M)8クラスの巨大地震を引き起こします。

*海のプレートがベルトコンベヤーのように動き、陸のプレートの下に潜り込むという考え方は「プレート・テクトニクス」に基づいています。ドイツの科学者、アルフレッド・ウェゲナーが1900年ごろ「地球上の大陸は、かつて一つの大陸だったのが、移動して現在のようになった」と大陸移動説を唱えました。当時は相手にされませんでしたが、海底の地磁気の調査から、大陸が移動していることが実証されました。地動説が天動説に取って代わったような転換でした。

 

[図表]過去に発生した南海トラフ地震

内閣府ホームページ/南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ
「南海トラフの巨大地震による津波高・震度分布等」(平成24年8月29日発表)、
南海トラフ地震対策「東海地震、東南海・南海地震対策の現状」をもとに加工
内閣府ホームページ/南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ 「南海トラフの巨大地震による津波高・震度分布等」(平成24年8月29日発表)、 南海トラフ地震対策「東海地震、東南海・南海地震対策の現状」をもとに加工

地震の起き方は一様ではないが、その間隔は定期的

南海トラフ地震は東側から東海地震、東南海地震、南海地震と呼ばれています。三つが同時に発生したのは1707年の宝永地震。東海、東南海が一緒に来て、その32時間後に南海地震が起きたのは1854年の安政地震。

 

前回の昭和の地震では、1944年に東南海地震が単独で起き、2年後に南海地震が起きました。東海地震のところが残っているので、40年ほど前に東海地震説が提唱されました。

 

地震の起き方は毎回異なっていて一様ではありませんが、その間隔は百年から百数十年と定期的に見えます。

*近年、過去の南海トラフでの地震の解釈がいろいろ進み、地震間で震源域を棲み分けているとの指摘もあり、その場合には発生間隔はもっと長くなります。とはいえ、いずれはやってくる地震です。

 

南海トラフ地震の前後には、内陸でもたくさんの地震が起きています。また、宝永地震の49日後には富士山が大噴火しました。安政地震前後は1853年から1858年の間に、全国各地で10を超える大地震が起き、江戸を襲った暴風雨やコレラの流行なども重なって江戸時代の終焉につながりました。

本連載は、2017年11月30日刊行の書籍『次の震災について本当のことを話してみよう。』(時事通信出版局)から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください

次の震災について本当のことを話してみよう。

次の震災について本当のことを話してみよう。

福和 伸夫

時事通信出版局

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