日本の防災官庁でも、家具止めしていないところが・・・
山手線を挟んで西側の日比谷、丸の内、大手町の辺りは、かつて海が入り込んだ「日比谷入り江」でした。その入り江を徳川家康が天下普請で埋め立てましたが、もともと地盤は良くありません。
それに比べて、時事通信社がある銀座周辺は台地から続く江戸の前島(実際は半島)だったところで、まだ地盤は良い方。時事通信社のビルも13階建てとそれほど高くなく、2003年の竣工で耐震性はまあまあのようです。
ところが、肝心の出版局に行くと家具の転倒防止が全然できていない。それなのに防災の本を書いてほしいと言います。そんな会社から本は出せないとグズったところ、社長が「すぐやります!」と約束してくれました。それで、この本ができました。
(*東海地震の予知を前提とした「大規模地震対策特別措置法」が見直されるというニュースが流れた2017年秋に、気象庁にある地震防災対策強化地域判定会会長の部屋の家具がやっと止められました。)
実は日本の防災官庁ですら、家具止めをしていないところは珍しくありません。うるさく指摘してもなかなか対策してくれない役所がたくさんあります。日本の社会はまだまだ言行不一致なので、私はときどきイライラして、雷を落としたくなります。
そんなこんなで一応、出版の打ち合わせは終わり、次の予定の講演会場に向かいました。都内の移動はできるだけ徒歩です。健康と安全の両面でお得です。地下鉄ばかり乗っていると、地上の土地勘がなくなってしまい、何かあったときに避難ができませんから。
外を歩いているときには、周りのビルをキョロキョロ見ながら、どのビルが安全そうか、今揺れたらどのビルに逃げ込めばよいか、とかを考えています。ビルでは、上りはさすがに疲れるのでエレベーターを利用しますが、下りはできるだけ階段を使います。地震で閉じ込められたときに怖いからです。万が一に備えて、携帯トイレは常に持ち歩いています。
少しの対策・行動の積み重ねで被害は圧倒的に減らせる
講演会場に着きました。講演のときには、舞台の上にはできるだけ上がらないようにします。上から目線なのが嫌いなこともありますが、演台のある場所は、だいたい照明や音響など、いろいろな吊りものが上から落ちてくる場所にあります。だから舞台の下の、非常口に逃げやすいところでしゃべらせてもらいます。地震が来たら、すぐ舞台の下に潜り込むか、非常口にダッシュするつもりです。
(*講演会では「こんなシャンデリアがぶらさがっている部屋で防災講演会を開くとは、何を考えているのでしょう。ちゃんと固定してください」と主催者いじりをしたりします。自分に起こることとして考える「我がこと感」を持ってもらうことが、私の話の起点です。)
居酒屋でも同じ。気心の知れた人と一緒のときは、座敷であろうがテーブルであろうが、私はできるだけ出入り口に近い席を選びます。気を遣って上席を勧めてくれることもありますが、私は幹事席の入り口が好きです。
充実した講演会も懇親会も終わり、「もう1軒」と誘われました。でも、やんわりとお断りします。東京都心に泊まるのは少し不安ですから。連日の出張でも、できるだけ日帰りを選ぶ。それが私の、東京出張の基本スタイルです。
普通の人から見れば、変な人ですね。でも、地震は絶対に来ます。少しずつの対策、行動の積み重ねで、被害を圧倒的に減らせられます。だから私は、心配性でありながら、こんな生活を楽しんでいられるのです。