無料または低額料金で介護老人保健施設の利用が可能
■無料低額介護老人保健施設利用事業
社会福祉法の規定に基づいて、生計困難者が経済的な理由で必要な介護を受ける機会が制限されることのないよう、無料または低額の料金で介護老人保健施設(老健)を利用できるようにする事業です。非課税世帯で、自己負担金を免除しないと介護サービスの利用計画ができない人が対象になり、介護保険の自己負担分と、居住費や食費などの自己負担分の合計が無料、または減免されます。
ただ、社会福祉法人の減免制度と同様に、この事業を実施するかどうかは各施設の判断に委ねられているため、事前に確認が必要です。自治体の社会福祉事業の担当窓口や、社会福祉協議会、福祉事務所などに相談してみましょう。
なお、私の法人グループにおいても本事業を実施しています。たとえば介護老人保健施設「ジョイフル名駅」(愛知県名古屋市)では、生活保護受給者には当該利用月における施設介護サービス費、食費、居住費の合計金額全額を減免しています。
また、住民税世帯非課税者、あるいは特別な事情により生活困難者であると施設長などが認めた場合、当該利用月における施設介護サービス費・食費・居住費・教養娯楽費の合計金額の10%を減免しています。要介護3・第2段階の人で「ジョイフル名駅」を30日間利用した場合、利用料金は食費込みで約7万円ですが、減免額は約3万〜4万円。要介護3・第3段階の人で利用料金は約10万円ですが、減免額は約4万〜5万円になります。
「自宅」を担保に、生活資金を借り入れる住宅ローン
■リバースモーゲージ(不動産担保型生活資金)
年金所得が一定以上ある人や、自宅の不動産などがあることで補足給付などが受けられない場合、介護費用を捻出するのは容易なことではありません。そこで利用できるのがリバースモーゲージ。主に都市部の自宅を担保にして、生活資金を借り入れる住宅ローンの一種です。
リバースは「逆」、モーゲージは「担保」を意味します。すでに保有している住まいを担保に毎月(あるいは毎年、一括払いなど)の融資を受ける形であり、通常の住宅ローンとは逆の流れであることが特徴です。欧米では高齢者の資金調達手段として普及しており、日本では全国に先駆けて1981年に東京都武蔵野市が導入しました。
[図表]リバースモーゲージの仕組み
現在、公的機関と民間金融機関による2種類の商品があります。毎月の返済は不要、または利息のみで、借り入れ人が死亡した後に相続人が自宅を売却して一括で返済します。持ち家があっても現金収入が少ない無職の高齢者が、不動産を担保に生活費や施設入所時の資金として活用できる点、そして自宅を手放さずに借り入れ後も住み続けられる点が大きなメリットです。
近年は三井住友銀行、みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行など、取り扱う金融機関の数も問い合わせ件数も急増しており、関心の高さがうかがえます。
ただし、不動産を担保にすること、そして貸付期間が長期にわたることから、不動産価格の下落や金利上昇などのリスクがあり、また高齢者本人が契約満期を過ぎても生存している可能性もあります。公的機関や金融機関ごとに条件が違うため、契約にあたっては契約条件をよく確認しましょう。
住み慣れた家を売却することに抵抗がある人も多いので、本人、家族および親族が合意した上で行うことが大切です。