前回は、意思決定能力が低下した人の生活を守る「成年後見制度」を紹介しました。今回は、日常的な生活援助の範囲内で支援を行う、日常生活自立支援事業について見ていきます。

本人の「判断能力低下」「契約内容への同意」が条件

日常生活自立支援事業

 

成年後見制度よりも手続きが簡単な制度に、社会福祉協議会が実施している「日常生活自立支援事業」があります。

 

精神上の障害(認知症・知的障害・精神障害など)により判断能力の不十分な人が地域で自立した生活を送れるように、社会福祉協議会が契約に基づき、福祉サービスの利用援助などを行うものです。

 

ただし、この制度を利用するには「本人の判断能力が低下している」そして「本人が日常生活自立支援事業の契約内容について同意できる」というふたつの条件が必要です。もし認知症が進行していて、契約内容自体が分からないようなら、利用することはできません。その場合は成年後見制度を利用することになります。

 

日常生活自立支援事業の条件にあてはまると判断された場合は、専門員が自宅を訪れて本人の意向を確認しながら、援助内容や実施頻度などの具体的な支援を決める「支援計画」を策定して、契約が締結されます。

 

[図表]日常生活自立支援事業開始までの流れ

訪問1回の利用料は平均で1200円程度

援助の内容は次のようなものです。

 

・福祉サービス、苦情解決制度の利用援助
・住宅改造、居住家屋の貸借、日常生活上の消費契約および住民票の届け出などの行政手続きに関する援助など
・預金の払い戻し、解約、預け入れの手続きなど、利用者の日常生活費の管理
・定期的な訪問による生活変化の察知

 

たとえば預貯金の払い戻しなど、訪問1回あたりの利用料は平均1200円。通帳や印鑑類をすべて預かってもらうには年間平均3000円かかります(契約締結前の初期相談にかかる経費、および生活保護受給世帯の利用料は無料)。これにより、利用者の生活基盤を整えることができます。

 

本人にある程度の判断能力があり、かつ「自分のお金の管理をほかの人にお願いする」ことに納得できるならば、ぜひ利用したい制度です。

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杢野 暉尚

幻冬舎メディアコンサルティング

介護が原因となって、親のみならず子の世帯までが貧困化し、やがて破産に至る──といういわゆる「介護破産」は、もはや社会問題の一つになっています。 親の介護には相応のお金がかかります。入居施設の中でも利用料が安い…

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