前回は、スイスの「伝統的プライベートバンク」のサービスを探りました。今回は、プライベートバンクの「プライバシー保持」を実現する仕組みについて見ていきます。

50万~1000万スイスフラン程度の金融資産が目安に

「プライベートバンキング」という言葉は、金融機関が富裕層の顧客に対して、あらゆる金融サービスを総合的に提案・提供する業務を意味する用語です。大手銀行では多くのサービスの一つという位置付けですが、プライベートバンクの場合はプライベートバンクサービスのみを専門に提供します。

 

「プライベートバンキング」という言葉の明確な定義はありません。リテールバンキング、プライベートバンキング、富裕層向けバンキングはそれぞれ区別されることがよくありますが、こうした区別は基本的には可処分資金の額やサービスの数に基づいています。

 

キャパシティの問題もあり、50万~1000万スイスフラン程度の金融資産を持つ顧客層がプライベートバンキングの対象となります。プライベートバンキングの概念は、金融機関の法的な枠組みとは関係ないものと言えるでしょう。

金融機関の顧客情報を自動交換する仕組みを導入

時代の変化は銀行業界においても変わりはありません。銀行の秘匿性を巡る状況も変化し、銀行へのプレッシャーは確実に増しています。

 

税金の透明性に関してグローバルスタンダードに近づけようとすれば、同様のポリシーで活動するすべての国々との間で、法律の役割やデータ保護に関する情報を互いに交換する必要が出てきます。

 

スイスは2018年までに、一度は廃止になった金融機関の顧客情報を自動交換する仕組み(AIA)を導入することを明言しています。概ね100に近い国や地域が賛同しており、顧客財産のプライバシー保護はこれにより限定的になります。

 

AIA

Automatischer Informationsaustausch(独)の略。OECDによる自動情報交換(AEOI:Automatic Exchange of Information)のこと。

 

ただしスイスは、このような他国の動き(プライバシーの制限)の中でも、プライバシー保護の観点から、引き続き詳細な顧客情報は公開しない方針を打ち出しています。すなわち、顧客情報は基本的に裁判所からの命令がない限り第三者に公開されることはありません。

プライベートバンクの嘘と真実

プライベートバンクの嘘と真実

篠田 丈

幻冬舎メディアコンサルティング

スイスの伝統的プライベートバンク経営者が共著・取材協力! その実態が初めて明かされる! 相続税増税や海外資産の取り締まり強化など、富裕層が持つ資産に対する捕捉は厳しさを増す一方。そんな中で注目されているのが「…

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