「株式会社」は株主の有限責任で成り立っている
パートナーシップ制に対し、「株式会社」は、出資金の範囲でのみ責任を負う株主から資金を調達し、株主から委任を受けた経営者が事業を行い、利益を株主に配当する、という法人格を有する企業形態です。
株式会社の特徴としては、法人格を持つこと、出資者(株主)は有限責任しか負わないこと、持分(株式)は自由に譲渡できること、所有と経営が分離されていることなどが挙げられます。
法人格を持つとは、株式会社はそれ自体が法的な主体となり、会社名義で事業を行ったり、契約をしたりできるということです。
これに対して「パートナーシップ」では、法人格を持つかどうかはそれぞれの国の法律によりますが、現在は法人格を持つのが一般的です。
出資者(株主)の有限責任とは、株式会社の負債等について、出資者(株主)は出資した分についてしか責任がないということで、個人の資産には一切影響が及びません。これは、出資者のリスクを限定することにより、多くの人から出資を集めるためです。
これに対して「パートナーシップ」では、無限責任の組合員(パートナー)が存在し、パートナーシップ(法人)の負債についてはパートナーの個人資産にも影響が及びます。
このため、「パートナーシップ」の事業経営は、なるべくリスクを避け、極めて慎重に行われることになります。
所有と経営が一体化されている「パートナーシップ」
持分(株式)が自由に譲渡できるということは、出資者(株式)がいつでも株式会社との関係から離れられるということであり、不特定多数の出資者から資金を集めるための仕組みです。
これに対して「パートナーシップ」では、特に無限責任の組合員(パートナー)がいなくなるとパートナーシップそのものが消滅します。無限責任の組合員(パートナー)とパートナーシップは不可分の関係にあるのです。
スイスの銀行法では、プライベートバンクに経営者ファミリーの名前を継ぐ者がいない場合、その銀行は存続できないことになっています。存続させたければ銀行の名前を変えるか、合併するしかありません。
所有と経営の分離とは、株式会社においては取締役会に経営を任せ、株主は収益から配当を受けるだけで直接、経営にはタッチしないということです。
歴史的には株式会社の規模が拡大し、多くの株主から資金を集めるとともに、専門経営者に経営が委ねられるようになったという経緯があります。
これに対して「パートナーシップ」では、所有と経営はパートナーにより一体化されています。
このように「株式会社」と「パートナーシップ」は、様々な点で対照的であり、そのことが大手銀行とプライベートバンクの銀行としての性格にも反映されているのです。