NPSの計測に必要な質問は「たった一つだけ」
前回の続きです。
NPSを計測する際は顧客に一つだけ、次の質問を行います。
「あなたは○○(商品やサービス)を親しい友人や家族にどの程度薦めたいと思いますか? 0~10点の間の11段階で点数をつけてください」
この結果、9~10点をつけた顧客は「推奨者(Promoters)」と呼ばれます。これほどの高い評価をしてくれる顧客は再購入率が高く、会社のファンとして商品やサービスを友人知人に薦めてくれると考えられるからです。
次いで7〜8点をつけた顧客は「中立者(Passives)」と呼ばれます。受身で満足している状態であり、ロイヤルティでなく惰性が動機付けになっている場合が多いと言われます。0~6点をつけた顧客は「批判者(Detractors)」と呼ばれ、その名前通り否定的なクチコミを発する存在であると言われます。
「推奨者」の割合から「批判者」の割合を引いた数値がNPSです。例えば9〜10点をつけた顧客が50%、6点以下をつけた顧客が30%だとすると、50%-30%=「20%」がNPSとなります。
[図表1]Net Promoter Score ®の算出方法
NPSの大きな利点は「顧客ロイヤルティの把握」
当然ながら数値が高いほど、その企業に対する顧客ロイヤルティが高いことを意味します。
以下の図表2は、いくつかのアメリカの有名企業のNPSですが、テスラは96%を超えるNPSを獲得しています。推奨者が98%、批判者が2%でようやく96%ですから、驚くべき数値です。
[図表2]有名企業のNPSの例
顧客ロイヤルティとは、企業自身や商品・サービスといったブランドに対する信頼や愛着度を示す言葉です。この顧客ロイヤルティが高いほど利益が大きいという相関関係が成り立つのであれば、人事評価制度にNPSを導入するメリットは十分にあります。
企業の目標を、単に売上を上げることではなく、その前提として「お客様に自社、もしくは自社の商品やサービスを愛してもらうこと」と捉えるのであれば、「成果」とは数字で表現される客観的な「売上」や「利益」ではなく、多少は主観的な要素が入るものの、顧客からの「愛情表現の指標」であるNPSを使うほうが至極自然です。
売上は必ずしも10点や9点を付けてくれる推奨者だけから成るわけではありません。中立者と言われる、選択肢が他にないから仕方なく買っている、今は特に不満はないから買っているに過ぎないという顧客の売上も多く含まれているため、「売上」という一つの数値だけからは「売上の質」は判明しません。「売上の質」を上げていくこと、つまり、推奨者の売上の割合を増やしていくことこそ、盤石なビジネスの基盤になるのです。
ビジネスの基盤を盤石にして初めて、経営者の掲げるビジョンを達成し、自分のビジネスを通じて世界を変えていくことが可能になるのです。
であれば、人事評価項目の期待成果の中に用いるべき「成果」は売上などの数値ではなくて、NPSのような指標であるべきです。
実際にNPSを期待成果の指標に利用している私のクライアントでは、半年に1回、幹部が重要な顧客を訪問し、NPSの数値を出してもらっています。また、その時になぜその数値なのかに対する忌憚のない意見ももらい、反省するとともに顧客の視点でさらに良い体験をしてもらえるように努めています。
現時点ではまだまだNPSのスコア自体は低いですが、半年に1回、重要な顧客を訪問し、話をすること自体が顧客ロイヤルティを上げる一助になるのだと感じています。