「成果育成型人事制度」が抱える2つの問題点
予算制度を採用し、予算と実績を毎月比較して差異(多くの場合マイナス差異)を把握し、未達成だと部下を叱咤激励して尻を叩く・・・このような光景はあちこちで見られます。
予算制度の最大の問題点、それは「予算と実績を把握してその差異(多くの場合マイナス差異)をもって部下を叱咤激励すること」が、上司に「仕事をした感」を与えてしまうことです。数字という客観的な道具を使って部下を指導したという充足感から、全く仕事をしていないにもかかわらず、上席者からすると管理の仕事をしたという錯覚に陥ってしまうのです。
広く世に普及した感のある成果育成型人事制度にも、このような「期待成果」にまつわる問題点があるのです。「成果」を売上達成率などの数値で設定することが正しいのかという問題、そこで多く使われている「予算」の作成過程の問題の2つです。
人事評価に「顧客ロイヤルティを数値化する指標」を活用
ならば、期待成果として使う指標から、売上などの客観的指標をなくせばいいのです。数字は客観的で分かりやすく、万人の理解を得られるものであるなどと言われますが、評価をされる側の気持ちから考えると、何となく胡散臭いものだと思われていると考えられます。評価される側からの理解は本当に得られているのでしょうか。
その代替案としていくつかの会社に進言して、人事評価制度の中の期待成果として使用している指標があります。それが近年脚光を浴びている「NPS」です。NPSとは「Net Promoter Score ®」の略で、顧客ロイヤルティを数値化するための指標です。
このNPSについては、「NPSと企業利益の間には、正の相関関係が強い」という研究結果が発表されています。つまり、NPSが高くなるほど顧客の推奨度が高まりますから、企業利益が増加する可能性も高くなるということです。
この話は次回に続きます。