「売上高」や「営業利益」で測るのが定番だが・・・
連載第2回で紹介した4つの区分の中で、評価項目を定めるのが最も難しいのはやはり「期待成果」です。「成果とは何か?」という問いに真摯に向かい合わねばならないからです。
人事コンサルタントによれば、期待成果とは「売上高」や「営業利益」であったり、「営業キャッシュフロー」などから採用するべきものとされています。
「成果目標は、低過ぎても高過ぎても個人のモチベーションを引き上げることはできませんので、絵に描いた餅にならないような塩梅が重要ですよ」という指導がなされることでしょう。
確かに今までのビジネスの考え方からすると、前述したような「売上高」や「営業利益」や、「営業キャッシュフロー」などが期待成果として採用するべき指標になります。数字は客観的であり、誰もが納得する指標です。つまり「成果とは数字で表現されるべきもの」というフレームが私たちの頭の中にあるのです。しかし、本当にこのような数字で「成果」を測ることが正しい方法でしょうか。
もう一つ気になることがあります。期待成果は通常、「達成度合い」を測るものとして定義されます。例えば、期待成果として全社売上高が採用された場合、評価という枠組みである以上、2つ以上の数値の比較とならざるを得ません。つまり、予算と実績を比較して、その達成度合いで評価基準(1~5ランク)を決めるということになります。
実績売上高は実績ですから、客観性に富んでいます。もちろん、粉飾等がないという前提です。問題は予算売上高です。通常、成果育成型の人事制度の人事評価項目の中には予算売上高が利用されます。人事コンサルタントは数字については門外漢ですから、「予算」について深く検討することは皆無だと思いますが、実は「予算」は曲者(くせもの)です。
期待成果として全社売上高が採用された場合、期待成果は、予算売上高と実績売上高の比較になります。予算達成率(実績売上高/予算売上高)95%などです。この数値が本当に意味を持つのは、予算売上高が「正しく」設定されている場合だけです(実績売上高は通常客観的で正しい)。
評価対象となる「予算売上高」自体に問題があることも
では、「正しい予算」とはいったい何でしょう。多くの会社が予算制度を採用しています。決算の3カ月前くらいから来年度の予算作りを開始し、1カ月前に役員会で承認され、次年度以降その予算を追いかけながらコントロールするということが中小企業でも広く採用されています。
しかし、その多くが前年度の実績をベースにしながら「来期は今期の10%増しの予算売上でいこう。10%くらいなら何とかなるかな。これ以下だとやり直しになってしまう」といった感じで作られていることが多いのではないでしょうか。
このような「正しい予算」を前提に実績と比較して達成率を算出し、その数値で評価をされることへの憤りは、評価される側にはないのでしょうか。部門の責任者で予算の作成にかかわっていたとしても、何かおかしいなという気持ちにならないでしょうか。
また、予算制度を採用する会社の多くで、特に営業会議などで次のような光景が頻繁に見られます。
営業担当役員「なぜ、今月も予算を大きく下回っているのだ!」
営業部長「足を引っ張っているのが関西支店でして・・・関西支店長、説明しなさい!」
関西支店長「はい。部下10人のうち予算を達成したのが5人、未達成が5人です。未達成者の実績を精査したところ、担当の顧客の80%で前年実績割れを起こしていました。原因は現在調査中です」
営業担当役員「支店長が部下の管理をしっかりしないから売上が上がらないんだろ!」