最終的には、自家用車を保有することよりも、人々と共有していく社会の形成を目指すと語る、スリランカのタクシー・アプリ「PickMe」の開発者。シェアリング・エコノミーの発展により、シェアの対象は車だけにはとどまりません。スリランカのシェアリング・エコノミーをお伝えしている連載の第3回です。

「所有」から「共有」へのパラダイム・シフト

インターネット上では「トゥクトゥク版Uber」と揶揄されているが、PickMeは類似の相乗りサービスやタクシー・アプリを提供する企業とは異なる使命感をもつ。「私たちは問題を解決したいのです。乗客とドライバーの双方が問題を抱えています。全員が恩恵を受けられるよう、この業界を変えたいのです」とZulfer氏は自身のヴィジョンを説明する。

 

Zulfer氏によれば、PickMeの最終目標はカーシェアをより広め、最終的には消費者に自身の車を手放すよう促進することだ。「自分の車を運転するよりも、タクシーを利用する方が断然コスト・パフォーマンスが良いはずです」とZulfer氏はそう主張する。ガソリン代、整備費、減価償却費、駐車スペース代などのコストにもかかわらず、人々が自分の車を運転することに固執するのは、その代替策となる公共交通やタクシーが不便で実用性に欠けているからだとする。

 

大半のタクシー会社は利益が出やすい長距離の乗車を優先して配車をするため、その他の乗客を待たせ続ける。しかしPickMeはフェアである。ユーザーはアプリ上の地図でPickMeの登録車がどこにいるのか確認でき、すぐに呼び出せるからだ。

 

「PickMeは依頼順にタクシーを割り当てるのではなく、ユーザーの最寄りのタクシーを手配します」とZulfer氏は話す。このシステムを運用するにはGPSが必要であるが、ほとんどのスマートフォンにはGPSが内蔵されている。

テクノロジーが広げるシェア型サービスの可能性

いわゆるシェアリング・エコノミー(共有型経済)、ピアツーピア(P2P)経済、アセットライト型ライフスタイル、あるいは、コラボ消費と呼ばれるワードが昨今トレンドにのなっている。これらはICTテクノロジーを駆使し、インターネットを介することで、他人との貸し借りを円滑にし、取引コストを削減している点が特徴となっている。そして最もシェアされている対象は、人々にとって資産の大半にあたる住宅や車だ。

 

インターネットやスマートフォンが普及する以前は、自宅の車をタクシーにすることは困難だった。しかし100人が自身の資産(この場合は自分の車)を貸し出すようになれば、そこに市場は生まれる。

 

ICTテクノロジーが可能にした、所有者と借りたい(買いたい)人をマッチングさせる対象は幅広い。車をシェアしたいならUber・Snapcar・GetaroundやLyft、家をシェアしたいならAirbnb、クリエイティブなプロジェクトを支援するにはKickstarter、企業に投資したい場合はAngellist、小額融資で途上国支援を行いたいならKiba、手作りの作品を購入できるEtsyなど、このようなサービスや企業は多岐に渡る。

 

これらのサービスは、インターネット上のマーケット・プレイスを創造することで、ネットワークを育み、ユーザー間の直接的な取引を可能としている。このような企業は何百とあり、キャンプ場の空きスペースのシェアを手助けするスウェーデンの企業から、ヒトゲノム配列システムを提供するオーストラリアの企業まである。

 

次回はPickMeに、登録希望のドライバーが殺到していることをお伝えします。

この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」が2015年10月に掲載した記事「Sharing Economy – Sharing economy firm gets Rs750 million valuation three months after launch」を、翻訳・編集したものです。

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