使用していない資産を誰かと共有することで収益を得る、シェアリング・エコノミー。その一形態であるタクシー配車サービスが世界中で話題になっています。スリランカにおいても、スマートフォンのアプリからタクシーを呼べるサービスが始まっています。その最新事情を5回にわたってお伝えします。

世界を席巻する「Uber」のスリランカ版

コロンボの海岸通り (Marine Drive)とゴール通り (Galle Road)を結ぶ細道が、車やトゥクトゥク※で渋滞になることに対し、人々の不満は高まっていた。そこに野党陣営による渋滞解消を求める声が出始めたことで、Jiffry Zulfer氏は自分達こそが今、アクションを取らなければならないと感じた。Zulfer氏は、タクシーを手配できる携帯アプリ「PickMe」を開発した企業の創業者でCEOでもある。

 

PickMeが2015年7月にサービスを開始して以来、Zulfer氏の会社は驚くべき成果を挙げてきた。コロンボにある本社前の道路の渋滞は解消され、3ヶ月の間で企業評価が急上昇した。そして人々は効率的にタクシーを手配できるようになったのだ。

 

PickMeアプリを運営するDigital Mobility Solutions Lanka社は、今や世界の至るところで利用できるようになったタクシー配車アプリ「Uber」のビジネスモデルを、スリランカの環境に合わせた上で応用した。PickMeが早い段階で決定的な成功を収められた理由は、既存モデルをスリランカ市場の特性に合わせて導入したことと、事業展開の素早さに求められる。

 

PickMe自体はタクシーを保有していない。登録されたタクシーと乗車したいユーザーを、アプリ経由でつなぐネットワークを運営するだけだ。誰でも自分のトゥクトゥクや自動車を登録できるし、登録したドライバーはフルタイムで運転する必要もない。登録ドライバーにはPickMeアプリ専用のスマートフォンを支給され、乗客を受け付けられる準備が整ったタイミングで、そのスマホからシステムにログインすればいいのだ。利用者はiOSあるいはAndroidスマートフォンからPickMeアプリをダウンロードし、基本情報を登録することで、いつでもタクシーを頼むことが出来る。

マッチングの手数料など「収入源の拡大」が今後の課題

アメリカを拠点に世界中の大都市に広まったUberは、タクシーに乗りたいユーザーと、そのユーザーの最寄り地点にいるドライバーをマッチングさせる世界初のデジタル・ネットワークだ。アメリカでは認可なくタクシー業を名乗ることは違法であり、またその許諾を受けるにはお金がとてもかかる。そしてタクシー免許を持たない限り、道端で車を呼び止める人を乗せることは禁じられている。

 

Uberでは、アプリを介して乗車希望者が直接ドライバーとコンタクトするため、この問題を回避することができる。Uberに登録したドライバーは、専用スマートフォン上のアプリにログインさえすれば乗車受付を開始でき、乗客はそれぞれのスマホからアプリを使って空車を見つけることが出来る。

 

実際、PickMeのビジネスモデルはUberやその類似サービスのそれとほぼ同じだ。しかし収益体制ではPickMeにはまだまだ課題が残る。PickMeを利用するタクシーは2000台以上に及ぶにもかかわらず、タクシーと乗客のマッチングサービスからは手数料収入を得ていないのだ。Uberやその類似サービスは、支払時の煩わしさを省くために、下車後に引き落とされるクレジットカード決済を導入しており、それが大きな収益源になっている。例えばニューヨークでは、タクシー料金の20~28%がUberの懐に入る。

 

PickMeは当初、専用のスマートフォンを登録ドライバーたちに無償で提供していたが、今は2500Rsを徴収している。そして現時点ではこれが唯一の収入源だ。今後はタクシー料金の決済システムを導入することで、手数料収入を得ることをZulfer氏は考えている。
 

次回はこのアプリを使うことのメリットについてお伝えします。

 

※トゥクトゥク
南・東南アジア地域でよく利用されている三輪型の自動車タクシー

この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」が2015年10月に掲載した記事「Sharing Economy – Sharing economy firm gets Rs750 million valuation three months after launch」を、翻訳・編集したものです。

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