申告書の提出期限の翌日から3年の間に譲渡した場合
前回の続きです。
(2)相続財産を譲渡した場合(相続税取得費加算の特例)(注1)
(注1)適用対象者には㋑農地等の贈与税の納税猶予(措法70条の5)、㋺非上場株式にかかる贈与税の納税猶予(措法70条の7の3)の適用を受けていた者で、その贈与者の死亡によって農地等または非上場株式を相続により取得したとみなされる者も含まれます(同条1項)。
相続または遺贈により財産を取得した者が、その取得した財産を相続税の申告書の提出期限の翌日から3年を経過するまでに譲渡(注2)した場合には、その者が負担した相続税額のうち、次の〔Ⅰ〕または〔Ⅱ〕の算式により計算した部分の金額が、その譲渡した資産につき一般の方法によって計算した取得費に加算されます(措法39条、改正措令附則15)。
(注2)資産の譲渡には、建物、構築物の所有を目的として土地等を長期間貸し付け、借地権等の設置の対価として土地の価額の2分の1を超える権利金を受け取った場合(措法31条1項)も譲渡として取り扱われます。
ただし、この加算した金額が譲渡収入金額から通常の計算による取得費と譲渡費用の合計額を控除した残額を超えるときは、その残額に相当する金額が限度となります。つまり、この取得費への加算により譲渡所得金額が赤字になったときは、その損失金額はないものとして取り扱われます。
〔Ⅰ〕平成26年12月31日前の相続・遺贈により取得した土地等の譲渡次の算式により、その者が譲渡した土地等に対応する相続税額だけでなく、その相続や遺贈で取得したすべての土地等に対応する相続税額が取得費に加算できます。なお、土地等以外の資産を譲渡した場合には、次の〔Ⅱ〕の取扱いとなります。
〔Ⅱ〕平成27年1月1日以後の相続・遺贈により取得した資産の譲渡
①平成27年1月1日以後の相続・遺贈により取得したすべての資産および平成26年12月31日以前の相続・遺贈により取得した土地等以外の資産を譲渡した場合
次の算式によりその譲渡した資産に対応する部分の相続税額が取得費に加算されます(措令25条の16第1項1号)(注3)。
(注3)同一年中に複数の相続財産を譲渡した場合には、その譲渡資産ごとに取得費に加算する金額を計算します。
(注4)①「相続税額」は、その資産を譲渡した日の属する年分の所得税の納税義務の成立する時(修正申告により税額が異動した場合には修正申告時)において確定している相続税額で、贈与税額控除(相続時精算課税にかかる贈与税控除を含む)が行われている場合には、これらの贈与税額控除がなかったものとし、相次相続控除が行われている場合には、その相次相続控除額を加算した金額により計算します。配偶者の税額軽減、未成年者控除、障害者控除、在外財産控除は、その適用後の金額となります。
②農地等の相続税の納税猶予特例の適用を受けている場合に、取得費加算額を計算する際の基礎となる相続税額は、納税猶予の特例適用後の税額となります。
(注5)「相続税の課税価格」は債務控除前の額とし、相続時精算課税による贈与財産および相続開始前3年以内の贈与財産がある場合には、その額を加算した額により計算します。
(注6)「譲渡資産の相続税評価額」は、相続開始日現在の相続税評価額によります。相続税の申告書第1表、第11表、第14表、第15表の写しを添付します。
②代償金を支払って取得した相続財産を譲渡した場合
代償分割によって代償金を支払って取得した相続財産を譲渡した場合の取得費に加算する相続税額は、次により計算します。
所得税の課税標準および所得税額等が過大となった場合
(3)所得税の確定申告時に相続税額が未確定の場合
この資産を譲渡した年分の所得税の確定申告期限の翌日から相続税の申告期限までの間に相続税の申告書を提出した者が、その資産の譲渡について取得費加算の特例を適用することにより、その者の所得税の課税標準および所得税額等が過大となった場合には、相続税の申告書の提出日の翌日から2か月以内に更正の請求をすることができます(措法39条4項5項)。