今回は、代物弁済、低額譲渡等を例に、「収入金額」がどのように決定されるのかを見ていきます。※本連載は、税理士の松本繁雄氏の著書、『資産税の実務 不動産の取得・譲渡・賃貸と税金』(経済法令研究会)の中から一部を抜粋し、土地・建物の譲渡により発生する「譲渡所得」の計算方法や課税方法などについて解説します。

債務返済のため、所有資産を債権者へ提供した場合

前回の続きです。

 

(3)代物弁済の場合

 

金銭で債務を返済する代わりに、自己が所有する資産を債権者に提供した場合にも譲渡所得が課税されますが、この場合の譲渡所得の収入金額は、原則として代物弁済により消滅した債務の金額(元利合計額)となります。ただ、債務の金額がその資産の時価よりも大きい場合には、その資産の時価により収入金額を計算します。

 

なお、代物弁済したことが、その所有者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であり、強制換価手続の執行が避けられない事情のもとで行われたと認められる場合には、譲渡所得は課税されないことになっています(所令25条の2)。

 

(4)経済的利益を受けた場合

 

このほか、資産の譲渡により次のような経済的利益を受けた場合には、その経済的利益の額も収入金額として計算します(所基通36-15)。

 

①資産を譲渡したことに伴い、物品その他の資産を無償または低い対価で譲り受けた場合におけるその資産の価額またはその価額とその対価の額との差額に相当する金額

 

②資産を譲渡したことに伴い、金銭の貸付を無償または通常の利率よりも低い利率で提供を受けた場合におけるその経済的利益の額

 

③資産を譲渡したことに伴い、借入金その他の債務の免除を受けた場合におけるその経済的利益の額

個人が法人に対し時価の2分の1未満で低額譲渡した場合

(5)低額譲渡の場合

 

個人が法人に対し時価の2分の1未満で低額譲渡した場合には、その譲渡した時における時価で資産の譲渡があったものとして譲渡所得が課税されますので、その資産の時価が収入金額となります(所法59条1項1号)。

 

このほか、次の場合にも時価による譲渡があったものとみなされ、譲渡所得が課税されます(所基通59-2・59-3)。

 

①法人に資産を贈与した場合

 

②限定承認にかかる相続または包括遺贈があった場合(個人に対するものに限る)

 

(6)負担付贈与の場合

 

個人に対する贈与または低額譲渡に対しては、みなし譲渡課税は適用されませんが、資産を贈与する代わりに、その資産の贈与者が負担している債務を引き受けさせるような場合には、その資産の贈与により債務の返済を免れることになりますので、その免れたことによる経済的利益の収入が生じたものとされ、その債務引受額をその資産の収入金額として譲渡所得が課税されます(所基通59-2)。

本連載は、2017年7月6日刊行の書籍『資産税の実務 不動産の取得・譲渡・賃貸と税金』(経済法令研究会)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

資産税の実務 不動産の取得・譲渡・賃貸と税金

資産税の実務 不動産の取得・譲渡・賃貸と税金

松本 繁雄

経済法令研究会

●平成29年度の税制改正に対応した最新版 ●日常の相談業務、窓口業務を展開するうえで必要な所得税の全てを網羅 ●随所に「申告書への記入」欄を設け、申告書の記入方法を具体的に解説 ●相談業務を展開するうえでの実務書…

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