「1.20フロアー」の突然の撤廃により、フランが暴騰
この数年でFXを始めた人にとって、スイスフランといえば「スイス(SNB)ショック」を思い出すかもしれません。
おさらいすると、スイス国立銀行(SNB)は2011年、ユーロ/スイスに1.20の下限(フロアー)を設定しました。ギリシャ債務危機以降、ユーロ建て資産をスイスフランに逃避させようとする需要が増大し、一方的なスイスフラン高が進んでいたためです。
ユーロ/スイスが1.20を割り込みそうになれば、SNBがユーロ買いスイスフラン売りをして押し上げる介入が幾度も行なわれました。度重なる介入はSNBの外貨準備を徐々に毀損させていきます。SNBは外貨準備の半分以上をユーロで保有していますから、ユーロ安による為替差損も大きかったのでしょう。
スイスでは、中央銀行が得た収益を各地方の連邦政府に分配する義務があります。介入による損失がふくらむことに、不満の声が上がったのかもしれません。議会からの圧力もあったのかもしれません。
いずれにせよ、2015年1月、1.20フロアーの撤廃を突如として発表し、数十分の間にスイスフランが2000pips以上も暴騰するスイスショックが起きました。
常にECBの顔色を窺いつつ、金融政策の舵をとるSNB
スイスとユーロ圏の政策金利を比較すると、恒常的に「ユーロ圏>スイス」となっています(以下の図表を参照)。SNBは、常にECBの顔色を窺いつつ金融政策の舵をとってきました。欧州債務危機、ブレグジット、極右政党などユーロ圏を揺さぶるリスク要因の安定化を最も願っているのは、SNBかもしれません。
[図表]2009年以降のスイスとユーロ圏の政策金利推移