今回は、「スイスショック」発生の原因と、スイス中央銀行の思惑を探ります。※本連載は、ロンドン在住の個人投資家として活躍する松崎美子氏の著書『ずっと稼げるロンドンFX(ファンダメンタルズ取引の実践テクニック)』(自由国民社)から一部を抜粋し、為替相場を動かす要素について、いま旬の「6つのテーマ」とともに見ていきましょう。

「1.20フロアー」の突然の撤廃により、フランが暴騰

この数年でFXを始めた人にとって、スイスフランといえば「スイス(SNB)ショック」を思い出すかもしれません。

 

おさらいすると、スイス国立銀行(SNB)は2011年、ユーロ/スイスに1.20の下限(フロアー)を設定しました。ギリシャ債務危機以降、ユーロ建て資産をスイスフランに逃避させようとする需要が増大し、一方的なスイスフラン高が進んでいたためです。

 

ユーロ/スイスが1.20を割り込みそうになれば、SNBがユーロ買いスイスフラン売りをして押し上げる介入が幾度も行なわれました。度重なる介入はSNBの外貨準備を徐々に毀損させていきます。SNBは外貨準備の半分以上をユーロで保有していますから、ユーロ安による為替差損も大きかったのでしょう。

 

スイスでは、中央銀行が得た収益を各地方の連邦政府に分配する義務があります。介入による損失がふくらむことに、不満の声が上がったのかもしれません。議会からの圧力もあったのかもしれません。

 

いずれにせよ、2015年1月、1.20フロアーの撤廃を突如として発表し、数十分の間にスイスフランが2000pips以上も暴騰するスイスショックが起きました。

常にECBの顔色を窺いつつ、金融政策の舵をとるSNB

スイスとユーロ圏の政策金利を比較すると、恒常的に「ユーロ圏>スイス」となっています(以下の図表を参照)。SNBは、常にECBの顔色を窺いつつ金融政策の舵をとってきました。欧州債務危機、ブレグジット、極右政党などユーロ圏を揺さぶるリスク要因の安定化を最も願っているのは、SNBかもしれません。

 

[図表]2009年以降のスイスとユーロ圏の政策金利推移

本書はFX(外国為替証拠金取引)の概要および投資の参考情報の提供を目的にしたものです。本書の内容に関しては万全を期すよう注意を払いましたが、それを保証するものではありません。本書の情報を利用した結果生じたいかなる損害、損失についても、著者、出版社および本書制作の関係者は一切の責任を負いません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。

ずっと稼げるロンドンFX(ファンダメンタルズ取引の実践テクニック)

ずっと稼げるロンドンFX(ファンダメンタルズ取引の実践テクニック)

松崎 美子

自由国民社

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