スコットランドは「ブレグジット反対」が多数派
これに異を唱えたのがスコットランドでした。もともとスコットランドはEU残留派が62%と、全体(48.1%)に比べて多く、圧倒的にブレグジット反対の土地柄でした。そのため、スコットランドでは改めて、「EU残留、イギリス(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)への残留」を問う住民投票を求める声があがりました。
[図表1]4邦からなるグレードブリテン及び北アイルランド連合王国
2014年に行なわれたスコットランドの住民投票は記憶に新しいところですが、再びの住民投票実施が濃厚となってきたのです。しかし、その実施時期をめぐってスコットランドと英国政府の見解は異なっています。
スコットランド自治政府が求めるのは2018年秋から翌19年春の実施です。これに対して、英国政府は「ブレグジット交渉が完全に終了した2019年3月末以降に実施すべき」としています。
「今度こそスコットランドは独立するかもしれない」とメイ首相は懸念しているからこそ、また、ブレグジットが「No deal is better than a bad deal」の言葉どおりに白紙での離脱となる可能性を念頭においているからこそ、2019年3月末以降を指定しているのだと、私は理解しています。
スコットランドが独立してもポンドへの影響は少ない?
スコットランドが独立国家となれば、彼らはEUへの加盟とシングル・マーケットへのアクセスを確保するでしょう。ただ、スコットランドには北海油田以外に、これといった収入源が見当たりません。財政をどう運営していくのか。ユーロを採用するのか、英ポンドの採用を続けるのか、そんなことが可能なのか。格付けはどうなるのかと、疑問は尽きません。
逆にいえば、スコットランドが独立しても英ポンドには大きな影響が及ばない、ということでもあるかもしれません。英連合王国の8割を占めるのはイングランドですから、短期的な打撃はあっても長期的に見れば思ったほどの悪影響はないと考えられます。
補足になりますが、ブレグジットへと動き始めたイギリスは「シングル・マーケット」へのアクセスを失うことになります。各国との個別交渉が不調に終われば、輸出品に対して関税をかけられることになるでしょう。ブレグジットとは、経済のグローバル化、自由貿易とは正反対の動きになります。
ブレグジットとトランプ当選、2016年に起きた2つのサプライズは「自由貿易に背を向ける」という意味では同じ道を歩んでいるのかもしれません(以下の図表2を参照)。
[図表2]EU離脱を問う国民投票(2016年6月23日)の結果