厳しい展開が予想される離脱交渉…ポンドへの影響も大
「No deal is better than a bad deal」
メイ英首相の話題となった発言です。直訳すれば「ひどい取引をするくらいなら、何もしないほうがマシ!」といった意味でしょうか。
2017年3月、ブレグジットを正式に通告したことで、イギリスはこれからEUと離脱条件の交渉に入ります。交渉期間は2年間。先ほどのメイ発言は、ハードとなるであろう交渉へ向けたメイ首相の決意を示しています。意訳すれば「2年の交渉期間中、EU側に有利な条件で妥協させられるくらいならば、何の合意もない白紙の状態のほうがマシだ」といったことになります。
この考え方には議会でも賛否両論がうずまきました。賛成派の言い分は、「EUが無理難題をつきつけるなら突き返せ、白紙でいい」というものです。反対派は「白紙で離脱すれば、貿易のみならず金融や労働などあらゆる分野でパニックが起きる」というものです。
2017年から2年間続く交渉は、イギリスにとって厳しいものになるでしょう。漏れ伝わる交渉の様子が、英ポンドを動かす材料となってくることは間違いありません。
移民は制限したいが、EU単一市場には残りたいのが本音
そんなイギリスですが、内憂外患のごとく内部にも火種を抱えています。それはスコットランドです。
ことの発端を説明するには、「シングル・マーケット」についてご理解いただく必要がありますが、日本ではあまり耳にしない言葉かもしれません。EU加盟国間ではあたかも1つの市場のように、人・物・お金・サービスが自由に移動することができます。これがシングル・マーケット(EU単一市場)です。
国民投票はEUからの離脱を問うものであり、EU単一市場を抜けるか否かについての説明はありませんでした。そのため、ブレグジット決定後、英議会は移民の制限を優先したため議論が起きました。
移民、すなわち「人の移動の自由に制限を課す」ということは大きな意味を持ちます。人・物・お金・サービスの「4つすべての移動の自由が無条件に保証される」のがシングル・マーケットですから、移民の制限はすなわち「シングル・マーケットからの離脱」を意味することになるのです。