一方的に売られ下落し続ける「トルコリラ」
新興国通貨の中でもトルコは政治リスクやテロのリスク、企業の借り入れにおける外貨比率の高さ、通貨防衛には不十分な外貨準備高、銀行の不良債権問題、大統領権限の拡大など、売り材料をあげればきりがありません。トルコリラに対する市場の信任は低下する一方です。
日本では「通貨安(円安)はいいこと」と思われています。私自身、日本に住んでいるときはそう思っていました。
しかし、いざ日本を出て外国で暮らしてみると、「自国通貨安をなぜ喜ぶのか、恥じるべきことではないのか」とする論調があることを知り、目からウロコが落ちる思いでした。自国通貨が高くなることは、市場からの信任が厚いのだから、いいことだという考え方です。市場からの信任を測るモノサシが為替レートであり、また国債の格付けや長期金利です。
2016年のブレグジットでは、英ポンドが大幅安となりました。EU離脱という前例のない選択に対して、市場は不信任をつきつけたとも考えられます。
「この先、英国で何が起こるかわからない、とてもじゃないが投資などできやしない!」
そう考えた投資家はイギリスから資金を退避させ、昨年後半の半年で英ポンドは20%近い下落を強いられました。格付け会社の見方も為替市場と同じです。
格付け大手3社のうち唯一、最上位となるAAAを付けていたスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は国民投票を終えた翌週、いきなり2ノッチ(格付けの位置を示す単位がノッチ)の格下げ、フィッチは1ノッチの格下げをそれぞれ発表しました。
政情が不安定になれば、資金は流出し国債の価値も下落
ある国の将来に対して不透明感が強まったり、不安が高まったりすると、それまでに流れ込んでいた資金が一斉に逆流し、逃げ出していきます。結果として通貨安が進み、格付けは低下します。その国は国債を売り出しても買い手は少なくなり、価格は下がり、長期金利は上昇します。
結果、財政の舵取りが困難になり、政策の選択肢がかぎられていくと、負のスパイラルに陥ってしまいます。
まさにこのスパイラルに陥りつつあるのがトルコです。世界のマネーがトルコへ戻るまでには時間がかかるでしょう。トルコが抱えている問題は多重的で複雑です。そこにロシアが絡んでくれば、もつれた糸をほどくのはなおさら難しくなります。
トルコから資金が逃げ出している一方、日本の個人投資家のFX資金だけは逆流しているようです。そこに悲劇の始まりを感じるのは私だけでしょうか。