まずは「申請可能な物件か」をセルフチェック
この連載では、私が実際に経験してきた大阪市の特区民泊の申請方法について詳しく説明していきます。
今後は他地域でも特区民泊は解禁されていく予定ですが、地域ごとに申請方法や手続きが若干異なる場合があります。また同じ大阪市でも、2016年末に公開されたものと、2017年1月現在公開されているものとでは、微妙に必要書類の形式などが変わっています。
ただ、おおまかな概要や流れは自治体問わず参考になるかと思いますので、本連載でおおまかに確認しつつ、細かな申請方法については各部署に相談してみてください。
ではまず、申請の手順の前に、どんな物件だと申請ができる可能性があるのかを確認しておきましょう。
特区民泊の申請をしようと物件を契約したのに、実はもともと申請するのが難しい物件だったということもあります。そういったトラブルにならないよう、ぜひ事前に「本当に申請ができそうな物件なのか」をセルフチェックしてから、実際に保健所や関係部署に足を運ぶようにしてください。そのほうがスムーズにことが運ぶでしょう。チェック項目は、以下の通りです。
管理組合の協力が得られるか? 建物の用途は何か?
①建物オーナーや管理組合の全面協力が得られるか?
まず1つ目のもっとも大事な確認事項は、「建物オーナーや管理組合の『全面協力』を得られるか」ということです。あくまでも「許可があるか」ではなく、「全面協力を得られるか」というところがポイントです。
なぜかというと、特区民泊の申請で必要な書類には「施設の所有者と賃貸者の許可書類」が必要なのですが、それに加えて、オーナーや管理組合に協力してもらわなければならないことが他にもあるからです。
たとえば、規模が大きい場合は防火管理者を設けて消防訓練や点検報告をすることが必要とされていたり、ごみの廃棄は「事業系ごみ」として許可業者への回収を依頼した上で、その収集場所は一般居住者とは「異なる場所」を用意しなければなりません。また、出入口付近に「民泊施設がある表示」をすることも義務付けられていますので、マンションの場合には、入口付近の目立つ場所に表示させてもらう必要があります。
他にもマンションの場合だと、居室内だけではなく他の部屋や共有スペースでも追加工事が必要になることもあるため、たびたびオーナーさんにお願いすることが多くなります。そのため、単純に「民泊の許可書類をもらえる」だけではなく、多少面倒なことでも、協力してくれるオーナーや管理組合なのかが大切なのです。
これがもし戸建賃貸の場合なら、他の居住者はいないので協力は得やすくなります。また自分自身がオーナーの物件を保有していれば、自身で決められますので、マンションよりはずっと申請はしやすいでしょう。
②建物の用途が「共同住宅」か「寄宿舎」、または「一戸建ての住宅」であるか?
特区民泊の申請をするための条件として、運営する施設が建築基準法上で「共同住宅」か「寄宿舎」または「一戸建ての住宅」にあたることが求められています。そのため「事務所」など他の用途の場合には、用途変更をする必要があります。
ただ、建築基準法の用途変更はもともとの構造にもよりますが、大規模な工事が必要になることが多く、かなりハードルが高いです。その場合は、具体的にどんな手続きや工事が必要かは、建築士などの専門家に物件ごとに相談すべきでしょう。
特区民泊を申請予定で物件を購入、または借りたとしても、そもそも建物用途が適合していないと、大幅な手間と出費がかかる可能性がありますので、必ず確認しておきましょう。
この話は次回に続きます。