建物や周辺環境が原因で、健康被害を引き起こすことも
住宅を購入するにあたって見過ごせない重要なチェックポイントがあります。それは、健康的に暮らせる家かどうかという点です。
家がもたらす健康被害の代表格は、シックハウス症候群です。1990年代後半に大きな問題となりマスコミにも大きく取り上げられたため、ご存じの方も多いと思います。このシックハウス症候群の原因となるのが、ホルムアルデヒドなどの有害物質です。
2003年に改正建築基準法が施行され、有害物質を放出する建材の使用が禁止されて以来、全体的によい方向へ向かいつつありますが、その一方で、いまだに有害物質を含んだ安い資材の家が一部に出回っているのが現実です。
また、建築基準法改正によってホルムアルデヒドなど一部の有害物質に対する規制は強化されましたが、対象から漏れている物質の中にも、人体に重大な健康被害をもたらす有害因子は存在します。たとえば、欧米ではすでに問題視されている電磁波や、福島第一原発事故を契機に世間の関心を集めている放射能などです。
家は一日のうちでも長い時間を過ごす憩いの場です。建物自体に有害物質は含まれていないか。周辺の環境に問題はないか。本連載で述べるポイントをチェックして、健康に長生きできる終の住処を見つけましょう。
日本では多くの住宅が「電磁波」にさらされている!?
ポイント①住宅の購入時には電磁波を測定する
電磁波というと、なんとなくは知っている、聞いたことはあるという人がほとんどだと思います。ですが、いざ住宅を購入するときになると、購入者の方が一番気にされるのは意外にもこの電磁波です。
不動産の仲介業をしていると、住宅の造りはもちろんですが、周囲の環境についての調査を依頼されることもよくあります。特に、お子さんのいるご家族からの依頼が多いのが電磁波なのです。
そもそも電磁波とはなんでしょうか。やや専門的な話になりますが、解説しておきます。まず、電圧がかかっているものの周りに発生する〝電界〟と、電気が流れているものの周りに発生する〝磁界〟があり、この2つを合わせたものを〝電磁界〟といいます。
周波数が高いと電界が磁界を生み、さらに磁界が電界を生むというように広がっていきます。この波のように広がる性質を持ったものが〝電磁波〟なのです。つまり、電磁波は電気と磁気の両方の性質を持つ〝波〟ですから、電気や電波が存在しているところには必ず電磁波が発生します。
私たちの暮らしを取り巻く環境を見てください。電子レンジ、IH調理器、テレビ、パソコン、エアコン、携帯電話、照明器具など、今や電気なしに生活は成り立ちません。
電気を使った生活を支えるために、住宅の屋内には相当な量の屋内電線が張り巡らされています。ある調査によると、25年前の2階建て住宅の場合は150メートルだった屋内配線が、現在は1000メートル以上になっているそうです。また、電気の使用量はこの40年間で6倍に増加したとの調査結果もあります。いずれも驚くべき数字です。
私たちは、電気による利便性を享受するかわりに、常に電磁波のリスクとともに暮らしているといえるでしょう。調理、給湯、冷暖房などの住宅設備をすべて電気でまかなうオール電化システムの住宅ともなると、さらにいっそう電磁波の多い生活ということになります。
また、強い電磁波は必ずしも高圧線や変電所といった特殊な場所にだけ存在しているわけではありません。
どこにでもある電柱、電線の中にも高圧線が走っている場合があります。全国電磁波測定士協会が2003年からの10年間で、全国延べ647カ所で実施した測定によると、電気配線から発生する〝電場〟と呼ばれる電磁波の強さが、海外の平均値(※1)の10倍以上ある箇所が、木造2階建て住宅で調査した箇所全体の67%にのぼります。
(※1)16.13V/m。WHO環境保健クライテリア(EHC No.238)より
また〝磁場〟と呼ばれる電磁波の強さが、発がん性のリスクがあるかもしれないとされる数値(※2)を上回る箇所も、調査対象の11%にのぼっています。
(※2)IARC(国際がん研究機関)による「2B(発がん性があるかもしれない)」の評価数値
このことからわかるのは、日本の住宅ではかなりの電磁波にさらされているということです。電磁波の強さは周波数(1秒間に発生する電磁波の波の数)で表されますが、その分類は次の通りです。
[図表]電磁波の発生源と周波数
この話は次回に続きます。