独自の魅力を作り上げ、高い入居率を誇る音楽マンション「ミュージション」。今回は、なぜ「いつでも楽器を演奏できる部屋」にこだわったのか、その理由を見ていきます。

入居者の「素直な欲求」を満たすためにはどうするか?

ミュージションでは、夜中でも誰にも気兼ねすることなく楽器を演奏することができます。たとえば、ベッドの中でメロディーが浮かんだら、すぐに飛び起きて思い切り奏でられる。そんな賃貸マンションは、日本では他に例がないでしょう。

 

筆者がミュージションを作るときにもっとも気にしたのは、部屋にいるとき誰にも制限されずに、思い切り音楽を楽しめるようにしてあげたいということです。なぜなら、それが演奏家の素直な欲求だと考えたからです。

 

音楽に限らず、誰にでも、こだわっている軸というものがあります。

 

「サーフボードを持って走って30秒で海に入れるところに住みたい!」

 

そんな思いを持つサーファーは、通勤がつらくても海の近くの部屋を借りるべきでしょう。仕事は必要最低限にして、ご飯も毎日お茶漬けでいい。でも、玄関の脇にボードを立てかけて、いい波が来たらバーっと走り出したくなるほどサーフィンが好きだ。そんな生き方を筆者は素敵だと思います。

 

同じように、音楽を愛する人というのは、音楽が生きることに深く食い込んでいます。彼らは音楽という本能を解放する場所を求めていますし、そのためならお金や労力を惜しみません。そのニーズを汲み取ることが、筆者の考える商品企画です。

「今すぐにやりたいことができる」領域まで企画をする

以前、建物内にゴルフ練習場の機械を置いた「ゴルファー向け住宅」というマンション企画がありました。筆者は、そこまで多くの人がゴルフに熱中するかは別として、ゴルフをやりたい人を対象にするなら、部屋の中に設備を設けなければ意味はないのでは? と感じました。

 

いくら同じマンションにあるといっても、部屋からその練習場に行くためには、それなりの準備が必要です。それは「便利」ではありますが、「本能を解放する」というレベルではないと思います。精神的な価値を与えられなければ、家賃を上乗せすることも難しいでしょう。

 

「今すぐにやりたいことができる」という領域まで商品企画を到達させなければ、入居者のニーズに応えた本当の価値が見いだせないと筆者は考えます。それが、部屋の中でなければならない理由です。

本連載は、2011年2月28日刊行の書籍『近隣物件よりも高い賃料で長く儲ける満室賃貸革命』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

満室賃貸革命

満室賃貸革命

鈴木 雄二

幻冬舎メディアコンサルティング

今後50年余りで、日本の人口は約9000万人にまで減少すると予想されています。これは、現在の人口から約3割もの人がいなくなる計算です。そのような将来が予想される中、今でも賃貸マンションは次々と建ち続け、オーナーさんは…

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