「ファンダメンタル分析」は長期的な株式投資に適した手法で、企業の経済活動を分析し、その株式価値を評価します。本連載では、日本証券アナリスト協会検定会員である松下敏之氏、高田裕氏の著書『外資系アナリストが本当に使っている ファンダメンタル分析の手法と実例』(プチ・レトル株式会社)の中から一部を抜粋し、セブン銀行(証券番号:8410)の株式分析を練習問題形式で解説します。

決算短信や決算説明資料などは最新のものから確認

書籍『外資系アナリストが本当に使っている ファンダメンタル分析の手法と実例』6章と7章で、日本M&Aセンターの事例を使いながら、株式価値の分析例を紹介してきましたが、説明を読むだけではなかなか分析のイメージが湧かないのではないでしょうか。本連載では、より理解を深めるために、練習問題形式で、セブン銀行(証券番号:8410)の株式分析にチャレンジしてみましょう。

 

業績予想作成からバリュエーションまでの手順は、以下の通りでしたね。

 

①ビジネスモデルの確認
②企業の歴史と業績推移の確認
③事業セグメントの確認
④利益構造の分析
⑤将来の事業環境の想定
⑥売上・利益の予想
⑦株式のバリュエーション

 

この順番で問題を解きながら、セブン銀行の株式分析をしていきましょう。まずはビジネスモデルの確認からです。各問題のアドバイスも参考にしてください。

 

なお、決算短信や決算説明資料などは、過去のものからではなく、最新のものから確認していくことをお勧めします。理由は、最新のものには、比較のために過去数年分の推移も一緒に掲載されていること、新しい資料のほうが開示されている内容が詳しくなっている可能性が高いことの2つです。

 

問題1.ビジネスモデルを確認しよう


▶セブン銀行の主要事業は?
▶どのくらいの規模?
▶ユニークな点はどこ?
▶売上があがる仕組みは?

 

アドバイス

 

セブン銀行のウェブサイトを見たり、ニュースを読んだり、会社が発行する有価証券報告書や決算説明資料、アニュアルレポート等を読んでみましょう。

セブンイレブン内でのATMサービスを提供

セブン銀行は、2001年4月に設立、2008年2月に株式市場に上場した銀行です。主要事業は、セブンイレブン内でのATMサービスの提供です。2016年3月末時点で、日本全国に22,472台のATMを設置しています。セブン銀行のATMサービスの収入源は、ATM使用に応じて「ATM受入手数料」を595社(2016年3月末時点)の提携金融機関から受け取っていることです。みずほ銀行、りそな銀行、広島銀行、京都銀行のような伝統的な銀行とは異なり、融資業務が中心ではないことが特徴的です。

 

セブン銀行の目指すATMのコンセプトは、「いつでも問題なく、誰もが使いやすく、安心できる」ATMです。下記図表にあるように、実際に独自の工夫やこだわりを持っているようです。たとえば、プライバシー確保の「ついたて」、斜め横からは見えないATM画面、杖やコーヒーを置く場所、12言語に対応した案内機能等があります。セブンイレブンというコンビニエンスストアにマッチしたユーザーフレンドリーなATMであると思います。

 

[図表]セブン銀行のATM機能

(出典:セブン銀行『ディスクロージャー誌』(2016)』)
(出典:セブン銀行『ディスクロージャー誌』(2016)』)

本連載は、2017年7月1日刊行の書籍『外資系アナリストが本当に使っている ファンダメンタル分析の手法と実例』(プチ・レトル株式会社)から一部を抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。
掲載している情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。投資はご自分の判断で行ってください。本連載を利用したことによるいかなる損害などについても、著者ならびに本連載制作関係者はその責を負いません。

外資系アナリストが本当に使っている ファンダメンタル分析の手法と実例

外資系アナリストが本当に使っている ファンダメンタル分析の手法と実例

松下 敏之,高田 裕

プチ・レトル株式会社

個人投資家向けに紹介するには難易度の高かったファンダメンタル分析の手法を、現役・外資系運用会社アナリストの著者が、ケーススタディを通して徹底解説。 実在の企業を取り上げて、著者がスクリーニングからバリュエーシ…

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