数ヶ月のスパンで相場が同方向に動くことはあるのか?
前回の続きです。マネージド・フューチャーズは、株式、債券、各種コモディティなどの先物を投資対象とし、100%コンピューター・プログラムで運用するトレンド・フォロー型のヘッジファンドです。
トレンド・フォローは投資対象が値上がりすると予想するなら「買い」、逆に値下がりすると予想するなら「売り」で対応します。結果、買っていたものが上がれば収益をあげることになりますが、売っていたものが下げることでも儲かるわけです。
つまるところ、投資対象が上げても下げても儲かるのですが、問題もあります。
たとえば、相場が不連続に動いてしまえばどうでしょうか。たとえば「原油が今日は80ドルだったが、翌日は120ドル、さらにその次の日は60ドル」といったような調子です。この場合、市場にはトレンド=相場の方向性はなく、ファンドは決して収益を出すことはできません。少なくとも数カ月というスパンで相場が同じ方向に動くことにより、初めて収益を得られる――それがマネージド・フューチャーズの特性です。
しかし、現実の世界ではどうでしょうか? 本当に、そのような相場のトレンドは実際に生じているのでしょうか?
そこで、過去のニューヨーク原油先物の値動きを例に振り返ってみましょう。
原油先物相場は、2006年から2008年7月にかけて、多少の上下動はあるものの、ほぼ一貫してきれいに右肩上がりになっていました。
相場が上がるから買う、この買いによってさらに相場は上昇する。この間のトレンドは「人間の欲望」によって形成されたといってもよいでしょう。
このような相場の上昇期には、市場参加者の「恐怖心」もまた、そのレベルを徐々に上げていくことになります。つまり、相場が上がれば上がるほど、市場参加者は怖くなるわけです。恐怖が欲望を上回るきっかけは、何も大きな出来事とは限りません。ちょっとした出来事――たとえば隣で端末をたたいているトレーダーが、原油の売りに転じた・・・といった些細なことで相場は反転し、急速に下がり始めることになるのです。
反転し始めた市場では、欲望に代わって恐怖心が相場を動かします。それまでの上昇の角度が鋭角であればあるほど、市場に蓄積された恐怖の総量は多くなるため、急速に下落することになります。
人間の欲望と恐怖が作り出す相場だからこそ・・・
原油相場でいえば、市場最高値をつけた2008年7月から年末にかけてが、この時期に相当しますが、実際にこのリーマン・ショックの最中、多くのマネージド・フューチャーズは20〜40%の高収益をあげています。
人間の欲望と恐怖が作り出す大きなトレンドで収益をあげるのは、生身の人間では難しいかもしれません。人間なら誰しも、欲望と恐怖をまったく排除することはできないからです。
その点、マネージド・フューチャーズは100%コンピューターによってプログラム運用され、相場が上昇するときには買い注文を出し、下落相場では売りで対応します。したがって、このような一定のトレンドが続く限り、収益をあげ続けることができるわけです。
相場の転換点では大きく損失を被るわけですが、それでも多くのマネージド・フューチャーズが長期的に利益をあげているのは、「人間が織りなす相場のクセ」のようなものをプログラムがつかみ、利用しているからといえるでしょう。
もっとわかりやすくいうと、マネージド・フューチャーズは「人間が持つ恐怖心と欲望を利用し、コンピューターが収益をあげる仕組み」なのです。そのため、そのほかのあらゆる金融商品とも異なる値動きをすることになります。このような観点で、サイクル性ペーパー資産と組み合わせて持つには適した商品ということができます。