前回に引き続き、「質屋」が最強のビジネスモデルである理由を探ります。今回は、質屋発展の歴史を見ながら、その商売の仕組みを説明します。※本連載は、株式会社アジア・ひと・しくみ研究所の代表取締役で、経営コンサルタントの新井健一氏の著書、『儲けの極意はすべて「質屋」に詰まっている』(かんき出版)より一部を抜粋し、なぜ最強のビジネスモデルが「質屋」なのか、儲けの仕組みを説明します。

そもそも質屋とは?…「質屋」発展の歴史を探る

そもそもみなさん、質屋ってご存じですか?

 

質屋について、まずはご紹介しましょう。質屋という商売はとても古くからあって、その起源はなんと鎌倉時代までさかのぼり、「質屋700年」と言われています。そもそも質屋の〝質〟は、お金を借りる保証として一定期間預けておく家財や衣服などの物品(動産)担保のことで、質草(しちぐさ)とも呼ばれます。

 

質屋は庶民の生活のための少額の資金を用立ててくれる、庶民のための金融機関として支持され、親しまれてきました。

 

質屋商売がはじまった当初は「庫倉(くら)」と呼ばれ、室町時代には「土倉」や「土蔵」などと呼ばれるようになったそうです。質草を保管するのに土の蔵など堅固な倉庫を設ける必要があったからです。

 

江戸時代になって質屋は、古着屋、古道具屋、小道具屋、古鉄屋、唐物屋などとともに「八品商」のひとつとしてまとめられ、当時の窃盗対策もあり町奉行支配下にあったといいますから、質屋は今の古物商の仲間ということになります。

 

それから近代になり質屋営業も法令化され、明治28年(1895年)には「質屋取締法」が制定されました。質屋は、盗品が持ち込まれることが多く、厳しい取り締まりの対象とみなされていたため「取締法」が制定されたというわけです。

 

そして戦後の昭和25年(1950年)に現行の「質屋営業法」が制定され、質屋を営業するには各都道府県の公安委員会の許可が必要となり、その際に質草の預かり期限(流質期限)は、質契約成立の日から3カ月以上とされました。

 

また、利息については、昭和29年(1954年)にいわゆる「出資法」が制定され、最高限度額は1日当たり0.3%、月9%となりました。

「金融機関」と「小売業」の儲けの仕組みを併せ持つ

ここでいったん質屋という商売の内容を、お客様の目線でまとめてみます。

 

<POINT>

お客さんは、質屋に質草を物品担保としてある一定期間預けることで、その物品の価値に見合ったお金を借りることができます。そして期限内に元本と利息を払えば預けた品物は戻ってきます。もしも期限内に元本と利息が払えなければ、質流れといって物品は戻ってきません。品物の所有権が質屋に移り、売られてしまいます。ですが、その代わりに借金を返す義務も一切なくなるので、サラ金などのように取り立てられる心配もないのです。

 

このように、質屋は、銀行などの金融機関のようにお金を貸してその〝利息を得る〟という儲けの仕組みと、質草として預かった(仕入れた)〝商品を売る〟という小売業のような儲けの仕組みを合わせもった商売です。

 

ひと昔前は、この業種だったらこんな儲けの仕組み、あの業種だったらあんな儲けの仕組みというように、商売で成功するための勘所や苦労はわりとはっきりしていました。しかし、今はどの業種もさまざまな儲けの仕組みの合わせ技で商売を営んでいる、というのが実態です。

 

それにご存じですか?

 

どんな商売もライバルとの競争が激しくなってくると、ますます同業と差別化するため、言い換えれば自分たちのオリジナリティを強調するために〝サービス業化〟していくのです。

儲けの極意はすべて「質屋」に詰まっている

儲けの極意はすべて「質屋」に詰まっている

新井 健一

かんき出版

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