今回は、「質屋」が最強のビジネスモデルである理由を探ります。※本連載は、株式会社アジア・ひと・しくみ研究所の代表取締役で、経営コンサルタントの新井健一氏の著書、『儲けの極意はすべて「質屋」に詰まっている』(かんき出版)より一部を抜粋し、なぜ最強のビジネスモデルが「質屋」なのか、儲けの仕組みを説明します。

形を変え、進化を続けている「質屋ビジネス」

今回は、本連載のタイトルにもある質屋ビジネスについてご紹介しましょう。

 

そもそも、質屋についてご存じですか? そういえば、最近は特に「質屋」と看板を掲げている質屋は見かけませんよね。それは質屋ビジネスが、ますますその形を変えて進化しているからです。みなさんが質屋を見かけなくても「もとをたどれば質屋」なビジネスは、よく見かけているはずです。

 

そもそもの質屋について早速ご紹介したいところですが、その前に徳川さんと中山さんの独立起業の計画に動きがあったようです。

 

結局、徳川さんの「会員制の高級バー」も中山さんの「駅前の立ち食いそば屋」も実現することはできませんでした。

 

徳川さんの場合は、「思い立ったら即実行!」ということで早速ビジネスプランを書きあげて、意気揚々とある銀行に持ちこみました。もちろん、商売の元手を融通してもらうためです。

 

対応してくれた融資担当者は、にこやかな微笑みを絶やさない人のよさそうな、(お金いっぱい貸してくれそうな)ナイスガイ。

 

ところが、徳川さんがビジネスプランの説明を終えるのを待たずに、融資担当者は「自己資金(資本金)がないのに、まるまる2億円もご融資することはむずかしいですね」と笑顔を少しもくずすことなく、やんわりと言い放って徳川さんを銀行から叩き出したのでした。

 

担当者はしごく当然の対応をしたまで、と言えますよね。

 

「ちぇ、絶対、儲かるのになあ・・・ビジネスのことをわかってない銀行マンだな」と徳川さんは愚痴をこぼしながら、銀行をあとにしました。

 

徳川さんは経営コンサルタントとして働いてきましたが、人をうまく巻き込むような人間関係を築いたり、天才的なヒラメキで事業を成功に導くことはできても、数字はまるっきりダメなのが災いしたようです。

「勝負をかけられる商売」を見つけたい中山さん

次は中山さん。

 

中山さんの場合は、起業と彼女へのプロポーズをなし崩しに決行しようとしたのがいけなかったようです。

 

会社が倒産したこと、そば屋をはじめようと思っていること、そして結婚してその店を手伝ってほしいということを素直に伝えましたが、「私はそば屋をやるために、あなたと付き合ってきたわけではないわ!」と言い放って、中山さんのもとから離れて行きました。

 

中山さんは、これまで彼女とケンカひとつしたことがありませんでしたし、いつも陽だまりのようにおだやかな彼女が、あんなに語気を荒げるのを見たことがありませんでした。

 

ショック! もう彼女とは終わってしまうかもしれない・・・。その不安は的中し、彼女にメールしても電話してもつながりません。

 

「僕が毎日そばを打つから、買い出しに行ったりとか、コロッケ揚げたりとかしてくれないかなあ」とはにかみながら伝えた自分のことを笑いました。そして彼女の揚げたコロッケが食べたかった、彼女の揚げたちくわの天ぷらをお客さんに出したかった、そんなことばかりくよくよと考える始末。

 

そば屋に関しても、彼女に働いてもらうことを前提に立てた計画でしたから、イチからプランを立て直さないといけません。スタッフを雇えば、人件費もかかって利益が減ってしまいますから。

 

そして、とうとう最後の出勤日。

 

会社をあとにした中山さんは、近くの公園で一人、缶ビールを飲みながら、これからのことを考えていました。

 

「やはり彼女への気持ちを断ち切ることができない。結婚して、ずっと一緒にいたい・・・。だから、本当に勝負をかけられる商売を見つけて独立しよう。そして大成功して彼女をむかえに行こう」

 

そう心に決めたのです。

 

この話は次回に続きます。

儲けの極意はすべて「質屋」に詰まっている

儲けの極意はすべて「質屋」に詰まっている

新井 健一

かんき出版

すべてのビジネスパーソンに必要な「数字」センスの磨き方 ここに、ひとつの事実があります。それは、一般のビジネスパーソンが知りたい「数字の知識」は、いわゆる「会計数字の知識」とはズレているということです。 ビジネ…

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