本連載は、株式会社アジア・ひと・しくみ研究所の代表取締役で、経営コンサルタントの新井健一氏の著書、『儲けの極意はすべて「質屋」に詰まっている』(かんき出版)より一部を抜粋し、なぜ最強のビジネスモデルが「質屋」なのか、儲けの仕組みを説明します。

儲けの仕組みを考えるには「効率」という視点が不可欠

大きな会社と小さな会社、どちらが儲かると思いますか?

 

大きな会社のほうが売上規模は大きいので、儲かるような気がしますよね。しかし、話はそんなに単純ではありません。会社の儲けの仕組みを考えるときには、「効率的に稼げるかどうか」という視点が必要になるのです。

バーを開きたい徳川さん、そば屋を開きたい中山さん

ここでは、徳川さんと中山さんにご登場いただきましょう。

 

「あんな会社、辞めてやったよ」

 

行きつけの居酒屋のカウンターで大将にくだを巻いているのは年収1000万円のコンサルタント・徳川さん。

 

「聞いてよ、大将。うちの社長が『年度末年俸支払い制』なんてふざけた制度を導入するとか言い出したんだよ。結局、半期ごとの支払いに落ち着いたわけなんだけど、こっちにはローンの支払いだってあるんだから困っちゃうよね。そこで、今回、俺も考えたんだけど、いくらそれなりに給料をもらっているからっていっても、そんな非常識なことを言い出す社長の下では働きたくないな、と。もともと起業して会社を経営してみたかったから、今回の件は逆にチャンスだと思ったわけ。だから、今日、早速辞表を出してやったよ」

 

静かに話を聞いていた大将が口を開きました。

 

「辞めたのはいいけど、どんな仕事をはじめるんだい?」

 

「会員制の高級バーのオーナーでもやろうかなって思って。西麻布あたりでに隠れ家的な店構えだったら、芸能人がお忍びで来ちゃうかもしれませんね」

 

大将があきれ顔でため息をついたところに、もう一人のお客がカウンター席に座りました。年収500万円のエンジニア・中山さんです。

 

「大将、ビールお願いします」と注文すると同時に、大きくふーっとため息をついた中山さんの表情は暗く沈んでいます。

 

「お客さん、どうしたの? 今日は元気ないね」

 

「大将、聞いてくださいよ。実は、会社が倒産することになって……本当についてないですよね。これまでコツコツと真面目に働き、会社に貢献してきたつもりなのに……今月末で無職ですよ」

 

「そうか、それは大変だったね。いつも一緒に連れてきてくれる彼女さんには、もう話したのかい?」

 

「いえ、まだなんですが……。実は、これを機に自分で商売をはじめようかと。僕も、そろそろ人生で勝負をかけてみたいって思ってたんですよね。もう雇われの身は卒業したいって。この際だから、彼女に結婚を申し込んで、商売を手伝ってもらおうかと思っています」

 

その話を聞いて、身を乗り出してきたのは徳川さん。

 

「おっ、同志! 俺もちょうど無職になったところ。お互い頑張ろうぜ! あっ、俺は徳川、よろしく」

 

「はぁ……僕は中山です」

 

「落ち込む気持ちはわかるけど、考え方を変えれば、新しい人生をスタートさせるチャンスじゃん! ピンチはチャンスって聞いたことない?」

 

「ええ、まあそうですよね。少しは退職金も出るようだし、前向きに考えたほうがいいですよね」

 

「その意気だよ。ところで、どんな商売をはじめるつもり?」

 

「駅前で立ち食いそば屋です」

 

「そば屋? なんか地味だな」

 

「性格的に博打はしたくないんです。あくまで堅実な範囲内の勝負ならなんとかなるかなって。それに、そばって奥が深そうじゃないですか。もともと僕はエンジニアだから、探求心が旺盛っていうか、ひとつのことを突き詰めているときにワクワクするんです」

 

「それはいいけど、立ち食いそばって儲かるの? 西麻布の高級バーのほうが儲かるでしょ」

 

と言って、だし巻き卵を口に運ぶ徳川さん。

 

「そんなには儲からないかもしれないけど、立ち食いそば屋は店舗のスペースもあまりいらないし、駅前で、しかも出すのが速くて、安くて、うまければ常連客も来てくれるんじゃないかな。僕、営業とかしたことないから、味勝負でいきたいんです。それにこだわりも大事にしたいですしね。もちろん天ぷらもコロッケも自家製にして、差別化するんです」

 

「こだわりはわかるけど、彼女は賛成してくれるかな。絶対、高級バーのほうがいいって言うに違いないさ」

 

しつこく高級バーをアピールしてくる徳川さんを無視して、中山さんは続けます。

 

「僕が毎日こだわりのそばを打つから、彼女には買い出しに行ってもらったり、コロッケを揚げてもらう……。うん、きっとうまくいく」

 

中山さんは自分に言い聞かせるように言うと、ビールグラスをつかんだ徳川さんが乾杯をしようと言い出しました。

 

「何はともあれ、お互いに頑張ろうぜ! 乾杯!」

 

「そうですね、頑張りましょう」

 

これが徳川さんと中山さんのはじめての出会いでした。

 

さて、みなさんなら「会員制の高級バー」と「駅前の立ち食いそば屋」、どちらの商売をはじめたいですか? 次回からは、家計から会計に話を移して、具体的な数字を当てはめながらそれぞれの商売の勘所や苦労はどこにあるのか、見てみましょう。

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