今回は、前回に引き続き日本の家庭の「エンゲル係数」が上昇している理由を見ていきます。※本連載では、経済評論家・加谷珪一氏の著書、『ホンモノを見分けられる人にお金は転がり込んでくる!』(ぱる出版)の中から一部を抜粋し、物事の真偽を見抜くための重要なスキルひとつである「数字に強くなる」方法をレクチャーします。

エンゲル係数上昇の直接的な原因は「消費税の増税」⁉

前回の続きです。

 

このほか消費増税がエンゲル係数上昇の原因とする記事もあり、それをもとにした反論も多数見受けられました。

 

エンゲル係数の上昇は2014年から顕著になっており、この直接的な原因は消費税の8%への増税と考えられます。

 

円安が進んだことで、日本では原材料価格が上昇する一方、給料はそれほど上がっておらず、家計の実質所得はマイナスが続いてきました。消費は弱いままですから、事業者は簡単に値上げすることができません。

 

2014年4月の消費増税をきっかけに名目上の値上げに踏み切った事業者が多く、これが食料品の価格を押し上げたと考えられます。消費税が上がっても、収入が増えたわけではありませんから、消費者は他の品目を切り詰めることになり、結果的にエンゲル係数が上昇したわけです。

数字を利用する場合も、感情に左右されない工夫が必要

しかし、税金が上がると必ずエンゲル係数が上昇するわけではありません。

 

1997年4月に実施された消費税5%への増税時には、エンゲル係数の目立った上昇は見られませんでした。当時は家計に余裕があり、贅沢品への支出も多かったはずです。消費増税に対しては、各品目についてまんべんなく消費を減らして対応したものと考えられます。

 

こうしたことを総合すると、やはりエンゲル係数の増加は、従来からの解釈通り、素直に日本社会が貧しくなっていると解釈するのが自然でしょう。

 

自分が聞きたい意見を取り入れてしまうのは、人間である以上、致し方ないことですが、これが行き過ぎると正しい対処ができなくなり、結果として自身の不利益につながります。また、人の意見をあたかも自分の意見であるかのように主張してばかりいると、そのうち自身の頭で考えることができなくなってしまいます。

 

今回の例は、数字を素直に解釈すれば得られるはずの結論が、感情というものに邪魔されて素直に解釈できなくなったというパターンです。数字にいくら客観性があるといっても、それを解釈するのは人間です。数字を利用するにしても、感情に左右されないための工夫が必要となるわけです。

ホンモノを見分けられる人に、 お金は転がり込んでくる!

ホンモノを見分けられる人に、 お金は転がり込んでくる!

加谷 珪一

ぱる出版

お金持ちが常識としている一瞬でホンモノを見抜く技術。成功者や大富豪たちは、確固たる「真偽眼」を持っている。氾濫する情報の選び方・評価のしかた・目の付け所とは? 真偽力を磨き、成功者の「金銭感覚」に目覚めるヒント…

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