私たちが住む日本は地震国として世界的に知られていますが、実は米国も、地域によっては地震の脅威に晒されている場所があるのです。今回は、米国不動産投資における「地震」のリスクと、不動産購入時の留意点を見ていきます。

日本同様、地震が多い「カリフォルニア州」

前回は、米国不動産投資における山火事のリスクと対策について説明しました。今回は地震についてお話します。

 

日本は地震が多い土地ですが、カリフォルニア州も日本同様地震が多いと言えます。筆者もロサンゼルス駐在時代、1994年にノースリッジ地震を経験しました。

 

ロサンゼルス北部サンフェルナンドバレー地区を震源地とし、マグニチュード6.7、被害総額はカリフォルニア州史上最大のおよそ1.3〜2.2兆円に上りました。いくつかのフリーウェイが寸断され、交通に支障をきたしたのを昨日のことのように覚えています。

 

地震の被害の大きさ順でいえば、これに次ぐのはサンフランシスコとオークランドをつなぐベイブリッジが落ちた1989年ロマ・プリエータ地震(サリナス近郊、M6.9)、サンフランシスコ所在の建物が全壊した1906年サンフランシスコ地震(M7.8)、1971年サンフェルナンド地震(M6.6)などです。つい最近でも、2014年および2015年に、サンフランシスコの北、ワイン産地のナパでM6の地震が起こったばかりです。

 

下記地図は米国地質調査による2016年時点での地震発生に関わる長期予測分布図です。ピンク色から赤色が最も可能性の高い地域を示しております。

 

[図表1]地震発生に関わる長期予測分布図(2016年時点)

(出所:米国地質調査)
出所:米国地質調査

 

地震発生メカニズムの日本とカリフォルニア州の大きな違いは、日本は太平洋プレート、フィリピンプレートがユーラシアプレートの下に潜り込むことから起こる収束型境界(サブダクション帯)である一方、カリフォルニア州は横ずれ型境界(トランスフォーム断層)であることです。

 

具体的には、バハカリフォルニア半島の南に太平洋の海底に南北に展開する、「東太平洋海嶺」で生まれるマグマが固まってできたマントルの動きに沿って、プレートが東西に広がっていきます。そして北西方向に展開している太平洋プレートが、北米プレートとぶつかり合う部分に、この「横ずれ型境界」(活断層)があります。

 

この活断層はサンアンドレアス断層とよばれ、2015年に公開された「カリフォルニア・ダウン(原題[San Andreas])」という映画の題材にもなっています。

 

サンアンドレアス断層は、バハカリフォルニア半島の北でサンディエゴ内陸部にあるソルトン湖の南を起点に、ロサンゼルスではパームデザート・サンフェルアンドバレーを通り、北はサンフランシスコ半島、メンデシーノ岬で太平洋に抜けていきます。

 

[図表2]各プレートの動き

(出所:カリフォルニア大学バークレイ校)
出所:カリフォルニア大学バークレイ校

 

ところで、ロサンゼルスは太平洋プレート上にあり、サンフランシスコが北米プレート上にあるため、毎年その距離を6mm縮めています。

 

日本でも、国土地理院の「都市圏活断層図」で詳しい位置が示されておりますが、カリフォルニア州政府でも下記URLから活断層の位置が確認できます。http://maps.conservation.ca.gov/cgs/informationwarehouse/index.html?map=regulatorymaps

 

[図表3]カリフォルニア州にある活断層の位置

出所:米国地質調査
出所:米国地質調査

現在は耐震性の強化が進むものの、古い建物は手付かず

カリフォルニア州政府では、1972年にAlquist-Priolo Special Studies Zone Act (1994年にAlquist-Priolo Earthquake Fault Zoning Actに改名) を制定しました。前年に起こったサンフェルアンド地震で、地表断層の上では建物の被害が80%近くに達した一方、断層からわずかでも離れた場所の被害が30%にも満たなかったことから、この法律が制定されました。

 

断層被害が生ずる可能性のある断層から、両脇約500フィート(約150m×2=300m)の地域には、特別監察地帯(下記図表4の地図はフリーモント近辺で、左図が新しいもので黄色部分がそれに当たります。右図は古く円形を結んだもの)を設定し、その中に構築物を建設する場合には予め地質調査報告書を提出するほか、報告書で断層が発見された場合には断層から50フィート(約15m)セットバックすることを義務付けました。

 

[図表4]フリーモント近辺にある特別監察地帯

出所:カリフォルニア州政府防災課

 

要するに、活断層がないことを証明しなければ、建築許可が下りない仕組みとなっています。また、特別監察地帯内に位置する不動産を売る場合には、売主(および不動産媒介業者)が購入者に対してその事実を伝えることが義務付けられています。さらに1976年には建築基準法も見直しされ、耐震性が強化されています。

 

とはいっても、サンフランシスコ・ベイ周辺では古い建物が多いため、旧耐震ともいえる・・・たとえば、1階に駐車場を設けるTuck-Under Parking を備えた建物は支えあう壁がないため、耐震性に欠けるものがいまだ多く存在しています。

 

2001年以降、サンノゼ州立大学の学生が実施した調査によると、サンタクララ郡内の共同住宅7,391棟について、36%の2,630棟が危険な状況にあるといいます。世帯数でいうと、30万9,716世帯のうち、11%の3万3,119世帯(8万2,798名)が危険な状況に晒されているとのこと。

 

このような状況下、特に旧耐震の物件購入時には、知見のある不動産ブローカー、設計士、専門家等によく相談して耐震性の見極めを行うことを強くお勧めします。

 

本記事の内容は筆者個人の分析・見解です。

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