前回は、プロパンガスの「国家備蓄」と「法定備蓄」の違いを取り上げました。今回は、プロパンガスの流通の現状と歴史について見ていきます。

日本でプロパンガスを使う家庭は約2400万戸

日本でのプロパンガスの年間消費量は、やや古いデータですが、2012年度には1657万トンでした。そのうち家庭用が827万トンです。一方、都市ガスの販売数量は369億立方メートルで、うち家庭用は98億立方メートルです。プロパンガスは家庭用が全体のおよそ半分で、都市ガスは4分の1ほど。世界規模で見ても、プロパンガスはその約半分が家庭用として使われている傾向があります。

 

プロパンガスを使う家庭は約2400万戸、都市ガスは約2940万戸。単位が違うため、プロパンガスと都市ガス、どちらの需要が多いのかわかりにくいのですが、家庭用に限っていえば、大きな差はありません。都市ガスがくまなく配管されている都心部で暮らしていると意外に感じるかもしれませんが、全国規模で見るとプロパンガスの需要はかなりの割合を占めているのです。ガス管が配管されていない地域はまだまだたくさんあります。

 

ただし、工業用は圧倒的に都市ガスの需要が大きいので、ガスの需要全体を見ると、都市ガスのほうが倍以上使われていると理解してください。

石油の代替燃料として使われていたプロパンガス

ちなみに、日本ではじめてLPガスが使われたのは1929年。ドイツの飛行船、ツェッペリン伯号が飛来したときに、プロパンガスを含むLPガスでプロペラ推進エンジンを動かしたそうです。

 

この時代、日本ではまだプロパンガスは流通していませんでした。そこで、現存するアメリカで最も古い化学企業のひとつ、カーバイド・アンド・カーボン・ケミカルズ社(現ユニオンカーバイド社)から取り寄せました。実飛行時間320時間20分の世界記録を樹立したツェッペリン伯号は、プロパンガスで飛んでいたのです。

 

[図表]日本ではじめてプロパンガス燃料が登場したツェッペリン伯号の飛来(1929年)

 

日本国内で日本人の手による利用は1940年頃といわれています。油田や製油所で石油の代替燃料として使われたそうです。

 

また自動車燃料として本格的に使われはじめたのは1963年。タクシーの燃料としてです。ガソリンよりも経済的であることが理由ですが、環境を考えてのクリーンエネルギーとしての評価も高く、現在でも多くのタクシー会社が、プロパンガスを主とするLPガスで車を走らせています。

 

家庭用燃料としては1953年頃から使われはじめました。それまで、都市ガスが配管されている地域以外は、固形燃料を使っていました。薪、炭、練炭などです。それらと比べてプロパンガスはカロリーがはるかに高く、使い勝手もよく、一気に需要が増えました。当時は都市ガスのカロリーも現在の2分の1、つまり、プロパンガスの4分の1でした。エネルギーとして、プロパンガスはかなり優位性があったのです。

スプレー式の殺虫剤や髭剃りクリームにも活用

プロパンガスが主原料のLPガスは、社会のさまざまな場面で活躍しています。

 

プロパンガスを使っている家庭では、ガスコンロをはじめ、ガス湯沸かし器やガス暖房機などで利用しています。しかし、都市ガスの家庭でも、意外なところで、プロパンガスやブタンガスといったLPガスを使っています。

 

●スプレー式殺虫剤

●スプレー式髭剃りクリーム

●ガスライター

●アウトドア用カセット式ガスコンロ

●ガスバーナー

 

このように、身近にあるさまざまなものが、プロパンガスをエネルギー源に作られています。配管されて家庭に届く都市ガスと異なり、プロパンガスにはボンベだけではなく、携帯できる商品も数多くあるので、生活の中のさまざまなシーンで活用されてきました。

 

[図表]プロパンガスが使われているシーン

出典:日本LPガス協会
出典:日本LPガス協会
エネルギー戦国時代は プロパンガスが制する

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後藤 庄樹

幻冬舎メディアコンサルティング

相次ぐ企業統合、新規参入、そして新エネルギーの登場……。 電力・ガスの自由化によってエネルギー業界は大変革期を迎えています。 市場では、大手エネルギー企業を中心に、割引プランやセット割など各社さまざまな施策を…

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