前回は、備蓄が義務づけられたエネルギー「プロパンガス」の重要性を取り上げました。今回は、プロパンガスの「国家備蓄」と「法定備蓄」の違いを見ていきます。

法定備蓄基地は、全国に30カ所以上存在

プロパンガスと石油の備蓄義務化のプロセスは次の通りです。

 

1975年 石油を法定備蓄として義務づける(石油備蓄法制定)

1981年 LPガスを法定備蓄として義務づける(石油備蓄法改正)

1989年 LPガス法定備蓄義務量50日を達成

1998年 国家備蓄会社発足

 

国が備蓄するエネルギーが国家備蓄、民間の元売業者が常時保管しているエネルギーは法定備蓄です。

 

国家備蓄の基地は国内5カ所で、備蓄容量は茨城県神栖(かみす)基地が約20万トン、石川県七尾(ななお)基地が約25万トン、岡山県倉敷基地が約40万トン、愛媛県波方(なみかた)基地が約45万トン、長崎県福島基地が約20万トンです。備蓄には地上の低温タンク型と地下のトンネル型があります。神栖と七尾と福島が地上型で、倉敷と波方が地下型です。

 

一方、法定備蓄の基地は全国に30カ所以上あり、岩谷産業、コスモ石油ガス、昭和シェルが共同で建設した茨城県鹿島の基地は約22.7万トンも備蓄できる規模です。

 

[図表]国内のプロパンガス国家備蓄基地

 

プロパンガスも石油も、年間を通して同じ量が消費されるわけではありません。当然冬がピークになります。暖房に使われるからです。そのため、多くの元売業者は、需要の少ない春から夏に在庫を増やしていきます。その結果として、年間を通して安定して輸入することができ、輸入元の国とも良好な関係を築けるわけです。

人里を離れた基地には熊が出没することも・・・

私の会社の従業員も国家備蓄の基地の視察に行くようにしています。東海地区から最も近い備蓄基地は、石川県七尾国家石油ガス備蓄基地です。

 

石川県七尾市の三室(みむろ)町と鵜浦(うのうら)町にまたがり、七尾港に面したこの備蓄基地は2005年に完成し、備蓄がはじまりました。総面積は約25ヘクタール。東京ドームの約5倍の敷地です。そこに直径約60メートル、高さ約45メートル、緑色の円柱形のタンク5基が立っています。うち3基がプロパンで15万トン、2基がブタンで10万トンの備蓄量です。

 

七尾基地の場合は、国が民間のENEOSグローブガスターミナルに運用を委託しています。ENEOSのスタッフと国家備蓄側のスタッフが、管理事務所に交代制で勤務し、モニターテレビで監視しています。

 

人が訪れることはほぼない地域なので、「監視システムが侵入者を察知し、確認したところ熊が侵入していた」というようなことも珍しくありません。

エネルギー戦国時代は プロパンガスが制する

エネルギー戦国時代は プロパンガスが制する

後藤 庄樹

幻冬舎メディアコンサルティング

相次ぐ企業統合、新規参入、そして新エネルギーの登場……。 電力・ガスの自由化によってエネルギー業界は大変革期を迎えています。 市場では、大手エネルギー企業を中心に、割引プランやセット割など各社さまざまな施策を…

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