業種により分かれる「奨励・許可・制限・禁止」
Question 中国の外資系企業受け入れ方針
中国の外資企業受け入れ方針はどの様になっていますか?また、今までの経緯を教えてください。
Point
●中国の外資企業誘致は製造業を中心に開始されたが、徐々にサービス業に対しての規制緩和が実施された。重要な転機となったのは、2001年のWTO加盟である。
●かつて外資企業に対しては、企業所得税の優遇が多岐にわたり用意されていたが、2008年の企業所得税法改定により、これらの外資優遇税制は廃止された。この様に、優遇措置が削られる一方、外資に対する規制も徐々に緩和されている。
●外資企業の受け入れは、業種により奨励・許可・制限・禁止の四種類に分かれており、「外商投資産業指導目録」に規定されている。
Answer
1.外資企業受け入れ方針
中国の外資企業受け入れ方針は、業種により奨励・許可・制限・禁止の四種類に分けられています。この具体的な内容は、「外商投資産業指導目録(本著執筆時点では2015年改訂版が最新)」に規定されています。因みに、同目録に記載されているのは奨励・制限・禁止の三分類だけであり、記載がない業種は許可類となります。
また、業種によっては、奨励分類であっても、出資比率制限・外国籍人員の高級管理職就任制限などが規定されている場合があります。
WTO加盟などがもたらした外資規制緩和への動き
2.外資企業受け入れ方針の経緯
中国の外資誘致は生産型企業を中心に、特に輸出型企業の誘致から開始されました。
このため、2000年までは、100%外資企業(独資企業)の場合は50%超の輸出が義務付けられるなどの規制が実施されていました。
この状況が、2000年以降徐々に変化してきています。その要因は、WTO加盟、外貨準備の拡大、国内市場重視といった中国の状況変化によるものです。
① WTO加盟
中国は2001年12月11日にWTOに加盟し、サービス業に対する参入障壁の軽減、貿易権・国内流通権の3年以内の開放など、各種の公約を行いました。
この結果、2004年に対外貿易法が改定され貿易権の開放が実現し、また100%外資の販売会社が認められるなど、各種のサービス業への規制緩和が実施されました。
② 市場環境の変化
2000年代になると中国進出ブームが起こり、外資誘致は成熟し、外貨準備も拡大しました。
これは、中国の外資誘致に重要な変化をもたらしています。
2000年代中盤になると、輸出奨励より国内市場重視という言葉がよく聞かれる様になりました。これは、輸出による外貨の獲得よりも、国内市場に物品を供給することが重要であるとの認識によるものです。これは、中国の外貨準備拡大や生活水準の向上を背景としています。この結果、加工貿易に対する制限が開始される(2007年。但し、リーマンショックにより制限措置は打ち切り)、投機目的の資金流入を規制する外貨規則が実施されるなどの動きがありました。
更に、2008年には企業所得税法が改定され、外資企業と内資企業の企業所得税法が統合されたことにより、外資企業に対して用意されていた軽減税率やタックスホリデーなどの優遇税制が全て廃止されました。
③ 外資規制の緩和
外資優遇は上記の通り削減されていますが、外資規制は段階的に緩和されています。
一番重要な転機は①で解説したWTO加盟に基づくものですが、それ以外には、以下の様な規制緩和措置が実施されています。
1)資本金規制
2014年3月1日の会社法・三資企業法(独資企業法・中外合資企業法・中外合作企業法)の改定により、最低資本金・資本金の払込期限・現金出資比率に関する規制が撤廃されました。勿論、外資企業に対しては総投資と資本金の比率(会社設立に要する総資金の一定割合以上を資本金とすることを定めた比率)があるため、完全に資本金額が自由化されたわけではありませんが、企業の活動規模に応じた資本金額を設定することが、従前に比べて容易になったのは確かです。また、資本金の払込期限が撤廃されたため、定款にその旨を記載すれば、5年以内、10年以内、経営期限以内などの様な払込期限の設定も可能となっています。
2)備案制への変更
2016年10月1日に三資企業法の改定、「外商投資企業設立・変更備案管理暫定弁法(商務部令2016年第3号)」が施行され、ネガティブリスト管理以外の外資企業の設立や登記変更(出資比率変更、増減資、閉鎖、合併・分割など)に関して、商務主管部門の許可審査が不要となりました。ネガティブリスト管理の外資企業とは、外商投資産業指導目録の制限・禁止類、及び出資比率制限・高級管理職就任制限がある奨励分類企業ですが、これ以外の企業であれば、設立・登記変更については商務主管部門の許可審査は不要であり、オンラインによる登録のみが義務付けられることとなりました。