見えないところで「病」はどんどん進行していく
ガンなどの大病も、早期発見できれば完治する確率は高く、発見が遅れれば遅れるほど、死亡リスクが高まります。「会社」も同様です。
破綻してしまった企業の多くは、じつはその数年前からなんらかの予兆が現れているものです。しかし残念なことに、大方は「後から考えてみたら……」という話で、そうした予兆に早くから、社長さん自ら気づくのはきわめてまれなのが現状です。
そしてある程度〝症状〞が進んでから、ようやく「もしかしたら、このままだとまずいかもしれない」と思い始めるのです。仮に、早く症状に気づいても、悲しいかな、人間というものはえてして、自分に都合良くものごとをとらえようとするものです。
これを病気にたとえてみましょう。たとえば「最近よく、せきが出るな」と思っても、「風邪だろう」と軽く考え、せきが長く続いても、「忙しくて疲れがたまっているから」とか「年のせいかもしれない」くらいに考えて、ほったらかしにしてしまいます。
ところが、こうしているうちに、身体の奥深く、見えないところでどんどん病は進行していきます。ついに、痛みや胸苦しさに見舞われるようになってから、重い腰をあげて病院へ行ってみたら、かなり肺ガンが進行していたことがわかった――ということになってしまうのです。
会社が「下り坂」であることに気づけない経営者も
このようなことにならないよう、1年に1回、ないし2〜3年に1回くらいは健康診断や人間ドックを受診する方もいるでしょう。
身体の健康に関わることなら、普段から気をつけてちょっとした自覚症状も見逃さないようにすることも、こうして病気の早期発見の機会を自分で容易につくることもできます。
しかしこと、「会社」の経営状態や財政状況となると、なかなかそうもいかないようです。年に一度は企業の経営診断を行うコンサルに必ず見てもらう、という社長さんは、ごく少数派といえるでしょう。
会社のお金のことはすべて経理担当に任せっぱなしで、年に一度、決算書による報告を受け、一応チェックするという社長さんはまだいいほうで、その決算書にすらほとんど目を通さないという社長さんも少なくありません。
また、多くの社長さんたちは、このままいくと危険だという下り坂を転がり始めている状況にあってさえも、「まだ大丈夫だろう」「まだまだ、なんとかいけるだろう」「そのうち良くなるだろう」……と、自己診断をしてしまいがちです。
さらに、そもそもその「下り坂状況」にあることにも気づけなかったというケースも、珍しくはありません。
「決算書上はなんとなく資金も回転しているようだし、そんな赤字にもなっていないし、まずまずだ」
「決算書なんて見なくても、ここのところ売上も上向きになっているから問題ないだろう」
このように思っているうちに、突然、資金ショートして、「来月、支払いができなくなりそうです」と報告を受けて、慌てる――という事態に陥ってしまうことがじつに多いのです。どうしてこんなことが起こるのでしょうか。
この話は次回に続きます。