「儲けたい投資家」と「楽しみたい旅行者」の違い
同じ時期に、同じ価格で、同じエリアに物件(ヴィラ)を買っても、利回り収益に大きな差が出ることがあります。
立地は悪くない、スペックもいい、でも、予約が入らないヴィラがある一方で、立地はイマイチ、スペックもそれほどでもないのに、お客が入るヴィラがあるのです。
どの物件も同じように集客しているから、営業努力の差ではありません。いったい何が違うのでしょうか。
結論を言うと、下記の2つで差が出ると考えられます。
●写真で見るヴィラの雰囲気
●実際に利用した印象
ヴィラの収益は、宿泊単価と稼働率で決まります。では、宿泊単価が高いヴィラ、稼働率がいい物件とは、どのようなものなのでしょうか。
ここで考えなくてはいけないのは、ターゲット、お客です。短期なのか、長期なのか。どこの国から訪れた人なのか。
バリ島で高利回りでヴィラを運用しようと考えたら、短期のお客をターゲットにすべきです。短期のお客、つまり旅行客は、宿泊単価が高い。それを高稼働率で回せば、当然収益は上がります。
2つの物件を例にして考えてみましょう。
①高スペックで効率的で過ごしやすい物件
②スペックはそれほどでもないがデザインがいい物件
そう、皆さんが想像する通り、②のほうが高単価で、稼働率がよいケースが多いのです。一方、投資家に支持されるのは、圧倒的に①の物件です。その理由は「おトク感」があるから。
土地が広く、部屋数が多く、機能的な物件は、建築コストも高い。
投資家は賢く、論理的な人が多くいから、おトクな物件、割安感のある物件を買いたがります。しかも、自分が使って過ごしやすければベストだと・・・。
しかし、ここに見落としがあります。「利用者は投資家とは視点が違う」という点です。投資家は、割安に物件を買って「儲けたい」が、利用者はただ単に「楽しみたい」。そこに理屈はありません。
では、利用者が求める「楽しみたい」を満たすのは、どのような物件でしょうか。
ひとことで言うと、「非日常」な物件です。利用者は、バリ島のヴィラに機能性や過ごしやすさを求めていません。
例えば、リビングと外庭にサッシは必要でしょうか。先進国の多くは、季節があります。日本もそうですが、夏は暑くて、冬は寒い。そういった国の建物は、気密性が高いことは絶対条件です。
バリ島でも、居住するなら気密性は求められます。しかし、旅行者にそれは必要ありません。自分の家は気密性を高めるためにサッシは必須ですが、サッシがない建物は開放感が得られます。
居住者にとって、バリ島のスコールは日常です。毎日のこととなれば、音はうるさいし、濡れるのも嫌だし、うっとうしいもの。しかし、旅行者にとってはそれも非日常なのです。
投資家目線では推し量れない「非日常感」の価値
「非日常」や「遊び心」の空間といえば、まず思い浮かぶのが高級ホテルです。私がホテルに行って感じるのは、洗面スペースの非日常感です。下にいくつか例を挙げます。
はっきり言って、どれも使いづらい。洗面ボウルは小さいし、ふたつある理由がよくわからないし、鏡だってムダに大きい。
一般家庭だと、このような感じになると思います。
お気づきになったかもしれませんが、ホテル用と家庭用の違いは「収納スペースの有無」です。家庭用なら、替えタオルや歯ブラシ、石鹸などのストックを収納する必要があります。しかし、ホテルには不要です。
バスルームにいたっては、洗い場がありません。
私はバスタブ一杯にお湯を張り、溢れされるのが好きなのですが、これでは床がビチャビチャになり、バスタオルを敷くハメになります。
使いやすさや機能性より、デザインや非日常感を重視しているのでしょう。非日常とは、非効率のことなのかもしれません。
投資家は、経済的に成功している人たちですから、計算や理屈は得意です。しかし、非日常な空間は、そういうものではないということでしょう。時には、振り切った考え方もアリなのです。
庭にお風呂があったら、雨のとき困るだろう。
収納があったほうが便利だろう。
エアコンを効率的に効かせるにはサッシが必要だろう。
などといった常識は必要ですが、その上で「非日常」を考えることが大切です。
とはいえ、やり過ぎは禁物。昔訪ねた友人の家は、400㎡のワンルームでした。玄関を一歩入ると「なんじゃ、これ!」。広がるのは、仕切りのない大空間。彼は絵を描くのが趣味だったから、それはそれでよかったのかもしれませんが・・・。
何ごともバランスなのです。