日本公庫による融資は、手続きや融資の種類に違いも
理美容店や飲食店などといった特定の業種を「生活衛生関係営業」といい、厚生労働省が所管する法律「生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律」で規定する一定の業種の総称をいいます。
[図表1] 生活衛生業一覧
今回、対象となる「飲食業」もこの中に含まれます。
この業種に該当する場合、信用保証協会付融資では特に問題とはなりませんが、日本政策金融公庫で融資を受ける際には、多少、手続きや融資の種類が異なることとなります。
「飲食業」などの「生活衛生関係」営業を行おうとする方が、日本政策金融公庫で融資を受けようとする場合には「一般貸付(生活衛生貸付)」か「振興事業貸付」、もしくは「生活衛生改善貸付」のいずれかを利用することとなります。
「一般貸付(生活衛生貸付)」は、生活衛生事業を行う方が通常の融資を受ける場合と同じタイプの貸付制度であり、「振興事業貸付」は、同じく生活衛生事業を行う方のうち生活衛生同業組合の経営指導を受けている方が利用できる要担保・保証人の制度となっています。
この2つの違いは、大まかには融資限度額にあると思ってください。
これに対して、「生活衛生改善貸付」は、生活衛生関係の事業を営む小規模事業者であって生活衛生同業組合等の長の推薦を受けて経営改善に必要な資金を無担保・無保証人で利用できる制度となっています。
[図表2]
「一般貸付(生活衛生貸付)」と「生活衛生改善貸付」では前者が要担保・保証人の制度であるのに対して、後者は無担保無保証となっています。
※ここでは「振興事業貸付」は割愛します。
しかし、後者については同業者組合からの推薦や人数要件などがあるため、すべての創業される方向けの制度ではありません。
無担保・無保証でも利用できる「新創業融資制度」
では、このような要件を満たさない方は、担保か保証人を用意しないと融資が受けられないのでしょうか?
こんなときに役に立つのが「新創業融資制度」です。
前にもご説明したようにこの「新創業融資制度」というのは、原則、どの融資制度にもプラスして利用できる無担保無保証で融資を受けたい方のための特別枠の制度です。
つまりこの場合には、
「一般貸付(生活衛生貸付)」+「新創業融資制度」⇒1,500万円まで無担保無保証
での利用が可能になるということになります。
ところで、「一般貸付(生活衛生貸付)」の要件のところで資金の使い道が「設備資金」となっていることに皆さんはお気づきになったでしょうか?
生活衛生の一般貸付は「設備資金」のみにしか対応していません。そのため、「運転資金」部分については、この制度が使えないのです。
では、設備資金だけではなく運転資金についても借り入れをしたいという方は、その運転資金のために、別途に信用保証協会付融資を利用しなければならないのでしょうか?
そういうことにはなりませんのでご安心ください。
この場合には、その運転資金部分については、通常の「普通貸付」を利用することができます。
※普通貸付とは、特別な要件なく、誰もが使える最もベーシックな融資制度です。
つまり、「一般貸付(生活衛生貸付)」を利用して設備資金と運転資金の両方について無担保無保証で融資を受けたい場合は
[図表3]
と、3つの制度を利用することにより、1,500万円までの創業融資を受けることができます。
ただ、このように書くと一回の借り入れで3つもの融資に申し込まなければならないのかと憂鬱に思う方もいらっしゃるかと思いますが、実際にこれらの手続きは1回の申し込みでできるようになっています。
また、通常の場合と比較して、特別に書かなくてはならない書類もありませんので、この点についての負担はご心配ありません。