前回は、薄毛を決定づける「男性ホルモンのレセプター」とは何かを説明しました。今回は、女性の薄毛(脱毛症)には、どのような種類や症状があるのかを見ていきましょう。

40代から発症する割合が多い「女性男性型脱毛症」

では、ここからはいよいよ女性の薄毛について解説していきます。

 

女性の薄毛(脱毛症)にはFAGAを含めて、さまざまなものがあります。ひとつずつご紹介しましょう。

 

●FAGA(エフエージーエー)(女性男性型脱毛症)

 

薄毛に悩む女性のじつに半数が「FAGA(女性男性型脱毛症)」です。

 

これは、主に生え際から頭頂部にかけて抜け毛が増え、同時に毛髪が軟毛化することによって地肌が透けて見えるようになる脱毛症です。最初は太い毛が抜け始め、徐々に細く弱々しい毛が抜けるようになるという症状は、男性に最も多いAGA(男性型脱毛症)と似ています。

 

しかし、額の生え際がM字型に後退したり、頭頂部の髪がすべて抜けてしまったりする男性のAGAの症状とは異なり、最終的にすべての毛が抜け落ちて、つるつるの状態になることはありません。女性の場合は毛髪が細くなり、多くの場合、生え際から頭頂部の範囲の髪がまばらになって密度が減少した状態となります。

 

また、特定の部位ではなく、全体的に脱毛症が進むこともよくあります。後ほどご説明する慢性休止期脱毛症と区別がつかないこともあるため、拡大鏡による検査を行うことが重要です。

 

FAGAは40代から発症する割合が多く、高齢の方に多く現れますが、なかには20代の患者様もいます。これは、加齢とともに女性ホルモンが低下するうえ、更年期によってさらに女性ホルモンの分泌が減少することで、相対的に男性ホルモンが過剰・優位となるために発症すると考えられています。

 

ただし、血中の男性ホルモン値が高いわけではなく、男性と違ってⅡ型5αリダクターゼ酵素が多いわけでもありません。このあたりがFAGAの治療を難しくしている要因といえます。

 

[図表1]FAGA(女性男性型脱毛症)の進行度を示すルードヴィヒ分類

 

[図表2]FAGAの女性

FAGAは、男性ホルモンが優位になることで発症

〈症状の特徴〉

●主に頭頂部の軟毛化を伴う密度低下が起こる。

●前頭部の軟毛化を伴う後退や、角額(いわゆる〝そりこみ〟部分)の後退を生じることもある。

●男性のAGAと異なり、頭頂部のみ薄毛が進行し、生え際は保たれることも多い。

●30代前半に気づく場合が多い。

 

〈原因〉

FAGAの原因は加齢に伴う女性ホルモンの減少による男性ホルモンの優位にあります。しかし、中には男性のAGAと同様に10代で発症するケースもあります。さらに思春期前の男女が発症するAGAやFAGAもあり、「Premature alopecia(超早期脱毛症)」と呼ばれます。

 

一方、祖父、父親の男系親族に薄毛の人がいると、発症しやすいともいわれています。そうした、遺伝的に薄毛になりやすい素因がある場合、血中のエストロゲンと男性ホルモンの割合が脱毛症(薄毛)の発症にかかわっているといわれます。

 

ただし、FAGAがどのように遺伝するのかは解明されていません。というのも、そもそも男性のAGAに深くかかわっているとされている男性ホルモンレセプター遺伝子は、男性の場合は母親から遺伝されるX遺伝子上にあるもの。息子は母親からX遺伝子を、父親からはY遺伝子を受け継ぎますから、これでは「父が薄毛であるため息子も薄毛になる」という類似性の説明がつきません。

 

男性ホルモン遺伝子周囲の多遺伝性的・多因子的な遺伝子の組み合わせが男性ホルモンレセプターの表現型に影響を及ぼす一方、他の遺伝子が男性ホルモンレセプターの発現レベルを制御していると考えられています。

 

この話は次回に続きます。

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