初期投資額が少なくて済む「サブリース契約」
前回の続きです。一般に、クリニックの開業における物件の選定には、以下のような方法があります。
①ビルの一室を借りる
②建物を丸ごと一棟借りる
③土地だけ借りて、建物は自分で建てる
④地主に建物を建ててもらって、土地と建物をセットで借りる
⑤土地を買って、建物も自分で建てる
④地主に建物を建ててもらって、土地と建物をセットで借りるという方法があります。この場合、地主と直接、交渉をするのはいろいろと難しいでしょうから、間にいわゆる管理会社などが入ることが多いです。
いわゆるサブリース契約です。サブリース契約とは、転貸借といって、地主が土地を貸すのは運営会社であり、医師は運営会社を通して土地と建物を借りることになります。
建物を借りるといっても、その設計は医師と運営会社とで協力して行いますから、実質的には自分で設計して建てるのと変わりません。しかし、建物の建設費は地主が持ってくれることになります。その理由は、地主と運営会社との間で、そのような契約が結ばれているからです。
運営会社は、地主に長期間の家賃保証を行います。その代わりに、地主は建物の建設費を支払って、自前で建設を行います。医師は、運営会社に対して土地と建物の家賃を納めます。もし、仮にクリニックの経営がうまくいかなくて、家賃の支払いがとどこおったとしても、地主に対しては運営会社が責任を持って家賃の支払いを行うことになっています。
このようなサブリース契約では、医師の側は、土地だけを借りて建物を建てる場合に比べて、毎月の支払家賃が高くなります。その代わり、建物の建設費を自分で支払う必要がないので、初期投資額は少なくて済みます。最初に多額の融資を受けるのが嫌だったり、お金がまったく用意できなかったりという人におすすめです。
しかし、20年、30年という長期間で考えると、建設費の融資の返済はいつか終わりますが、土地と建物の家賃の支払いは半永久的に続くので、資金に余裕があれば自分で建てた方がよいといえるかもしれません。
土地を購入するより、よい場所にある借地を探す
最後に、⑤土地を買って、建物も自分で建てる場合です。このケースでは、家賃の支払いがないので、毎月のキャッシュフローは楽になりますが、初期投資額が非常に大きくなってしまいます。また、土地を売りたがる地主もそれほど多くないので、場所の選定に時間が取られるばかりでなく、その選択肢も少なくなってしまいます。
親の土地などがすでにあって、どうしてもそこで開業しなければならない、などという場合は仕方ないですが、クリニックは立地が命ですから、土地の購入にこだわることなく、よい場所に借地を探す方が望ましいでしょう。
いずれにせよ、「開業したい」という明確な意思があるのなら、不動産屋に出向いて実際に開業する場所を探してみたり、開業コンサルタントに話を聞きにいったりなど、何らかの行動に着手するべきです。