今回は、行政の制約など、サービス開発に制限がある介護事業の難しさについて考察します。※本連載は、社会保険労務士、社会福祉士の資格を活かしたコンサルタントで、「福祉介護業界」に特化した人事制度や労務管理へのアドバイスを全国の顧問先で行う、株式会社シンクアクト代表・志賀弘幸氏の著書、『ビジネスとしての介護施設』(時事通信出版局)の中から一部を抜粋し、介護施設の経営改善策を解説していきます。

価格や報酬面では安全・安定的なビジネスだが・・・

いまや介護業界にも「ビジネス」という言葉はかなり浸透してきています。介護保険制度の導入によって、デイサービスや訪問介護事業に異業種からの参入があり、一気に介護ビジネスという言葉が広がりました。

 

介護保険制度がスタートした当初に参入した事業者にとって、次の2点は特に大きな魅力であったはずです。

 

①国が決めた報酬であり介護報酬の値崩れの恐れが少ない

②サービス提供の2カ月後には国保連から確実に入金される

 

①については、実際のところ、値引きは一定のルールの届け出をすることで可能ですが、地域によって多少の差はあるものの、みなさまもよくご存知のとおり基本的には全国一律の報酬体系となっています。また②についても、ご利用者から一部負担金が未収になるケースもありますが、費用の9割が国保連から確実に入金されるシステムになっています。

 

このような理由から、一般的なビジネスの起業と比較すると、安全かつ安定的なビジネスであるという判断が多かったように思います。

介護業界では厳しい規則を守りつつ、新サービスも必要

しかし、介護事業は税金や社会保険料などの国費が投入されるため、国が定めた制度のもと、多くの制限や基準が細かに規定された制度ビジネスであるということを忘れてはならないのです。

 

従来は社会福祉法人にしか認められていなかった介護サービスの提供が民間企業にも解禁されたわけですが、完全に自由になったというわけではなく、一定の縛りの中だけで認められた制限的自由市場なのです。

 

そもそもこの市場の成り立ちは、社会的弱者保護が主旨である行政機関による措置制度がベースとなっているため、大前提として利用者支援や利用者保護のためのルールや規制は堅持されています。その厳しいルールや規則などを遵守しつつ、ご利用者のニーズを満たすための新しいサービスを考えることも求められます。この介護業界で生き残っていくことの難しさを表しています。

ビジネスとしての介護施設

ビジネスとしての介護施設

志賀 弘幸

時事通信出版局

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