新人研修で企業理念をみっちり学ぶオリエンタルランド
最近、経営計画発表会を開催する介護事業所が増えています。経営者が経営状況をオープンにして、経営実態をスタッフに知ってもらうこと、経営に関心を持ってもらうこと、そして今後の経営方針をリーダーやスタッフに知ってもらうことで、スタッフの意識を統一し、ベクトルを合わせることが目的です。
その経営計画発表会の中で、多くの事業所が取り入れているのが「経営理念の唱和」です。参加したスタッフの中には「自分の会社の経営理念を初めて聞いた」という方もいらっしゃいます。実はこの経営理念の周知と徹底が、その事業所の団結力や組織力に大きな影響を与えていると私は考えています。
例えば理念経営で有名な「株式会社オリエンタルランド」。東京ディズニーリゾートを運営している会社です。同社のホームページを見ると、トップ画面に「企業理念」があります。そこにあるのは「企業使命」「経営姿勢」「行動指針」。
「企業使命」には「自由でみずみずしい発想を原動力にすばらしい夢と感動ひととしての喜びそしてやすらぎを提供します。」とあり、経営姿勢、行動指針の内容にはより具体的行動が示されています。
この企業理念をオリエンタルランドのスタッフは新人研修でみっちりと学び、共有することで、その理念の実現のために行動できています。
ご存知の方も多いかと思いますが、東京ディズニーリゾートのスタッフの9割がパート・アルバイト社員と言われています。パート・アルバイト社員が企業理念を理解し共有した結果、日本でも有数の顧客満足度を維持していることは、理念教育の成果とも言えるでしょう。
介護事業もオリエンタルランド同様、パートスタッフが第一線で活躍しているサービス業です。介護業界にとっては参考にすべき点が非常に多い企業モデルであり、オリエンタルランドの教育機関である「ディズニーアカデミー」では、介護系企業や社会福祉法人の受講も多いと聞きます。
理念なき事業所では「スタッフが進む道」を示せない
このように、実際に自分の勤務している事業所の企業理念を知っているのと知らないのとでは、利用者満足度のみならず職員満足度にも大きな差が出てくることになるでしょう。そして時間の経過とともに介護の質、つまりサービスの質にもバラつきが出てくることが考えられます。
特に介護職は、属人的になりやすい仕事です。介護者によって技術や知識などに少なからず差があるのが実態です。ご利用者から評判の良いサービスなどは事業所内でどんどん普及し、他のスタッフもその技術などを共有できるようになれば、事業所全体のサービスの質が向上することになります。
その良いサービスの原点は、理念に基づくものになります。例えばあるデイサービスでは「ご利用者の笑顔とご家族の安心が私たちの願いです」という経営理念があります。
この理念の実践のためには「ご利用者に笑顔になっていただく」ことが目的になります。笑顔になっていただくために、まずはそれぞれのスタッフ自身が笑顔になってサービスを提供することを心掛けました。
また「ご家族の安心」を実現するために、日中のサービス提供時間はもちろんのこと、自宅で「いざという困った」ときに、ご家族の相談にのることができる体制の整備も進めることで、スタッフ一人ひとりが「頼られている存在」を意識するようになり、仕事のやりがいを感じるという意見が増えました。
多くの組織を見てきて、職員満足度の高い事業所には、このような理念を共有するという文化が組織の根底にあると考えています。理念なき事業所・法人は、スタッフがどこに進んでいくのかを示していません。好き勝手な方向にスタッフが進んでいく可能性も大きくなります。