今回は、経営する介護施設のスタッフたちの不満をどう解消するかを見ていきます。※本連載は、社会保険労務士、社会福祉士の資格を活かしたコンサルタントで、「福祉介護業界」に特化した人事制度や労務管理へのアドバイスを全国の顧問先で行う、株式会社シンクアクト代表・志賀弘幸氏の著書、『ビジネスとしての介護施設』(時事通信出版局)の中から一部を抜粋し、介護施設の経営改善策を解説していきます。

言い分を聞くだけではなく、客観的な判断・確認を

これはある訪問介護事業所の登録ヘルパーとご利用者との人間関係での例ですが、「あのAさんという利用者さんとは相性が合わないから担当したくない」という相談が管理者にありました。そのとき、ヘルパー本人曰く、「無理な要求をして、私の仕事を否定するから嫌だ」と。「困ったものですね……」。

 

ですが実際は、ヘルパーがご利用者の都合よりも自分の都合を優先する傾向があることが、ご利用者やそのご家族、また同僚職員など複数のヒアリングなどからわかりました。「自分の想い通りにならないから、自分の仕事を否定された」という表現で不満を言ってきていたのです。

 

基本的に「不満」というものは「主観的」なものです。当たり前のことですが、本人の言い分だけではなく、客観的に判断、確認することが非常に大切です。

 

また、職場の人間関係が悪化するとチームワークが機能しなくなります。介護は異職種連携のチームワークが重要ですから、ご利用者にその影響が出てしまいます。スタッフ間の人間関係悪化の兆候は「陰口、悪口、うわさ話」の多さです。これはどこからともなく聞こえてきますし、職場のスタッフの表情や言動から目にみえて悪化していきます。

 

ある施設では、「たばこを吸うための小休憩」で複数のスタッフが集まると悪口で盛り上がっている、そんなこともあったため、たばこの小休憩時は原則1人にする、という規則ができてしまったような例もありました。仕事は好き嫌いでするものではない、ということをしっかりと教育することが大切です。そのためにどうすればいいかについては、また後ほど述べたいと思います。

不満を改善して満足に変換…「振り子の法則」とは?

次に不満の多い項目が「経営方針・経営者」です。これは筆者著書『ビジネスとしての介護』で詳述した「経営理念」の徹底が対応策となるでしょう。

 

経営者の「想い」が伝わっていないこと、コミュニケーションの不足が不満の原因となっていることが多いのです。不満を解消するには、とにかく「話せばわかる」のです。思いの外、コミュニケーションを多く取ることで比較的早く解消できます。そしてこれらの不満に対して、もう一つ重要なのが「スピード感」です。

 

不満に対して対応のスピードが遅いというのは、想像以上に相手の不満を増大させ、「不満」から「不信感」に進化させていきます。「不信感」に進化してしまうと、その解消には多大な時間を要します。速い対応で「不信感」にならないようにすることも忘れてはなりません。

 

よく不満は「改善への宝」と言います。「振り子の法則」という言葉があります。「快」という感情を味わうためには「不快」という感情が必要なのです。振り子の「不快」という感情が大きければ大きいほど、その反動で振り子は大きく振れます。その反対は「快」というゾーンです。「快」という感情が大きければ大きいほど、大きな「快」を味わうことができるというものです。

 

不満を改善することで満足に変換することができます。その対応が適切であり、誠意ある態度の改善は、場合によっては「大満足」「ファン」にすることも可能です。不満を満足に変えることができれば、結果としてその職場は非常に楽しく、やりがいのある職場になるはずです。

 

ビジネスとしての介護施設

ビジネスとしての介護施設

志賀 弘幸

時事通信出版局

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