言い分を聞くだけではなく、客観的な判断・確認を
これはある訪問介護事業所の登録ヘルパーとご利用者との人間関係での例ですが、「あのAさんという利用者さんとは相性が合わないから担当したくない」という相談が管理者にありました。そのとき、ヘルパー本人曰く、「無理な要求をして、私の仕事を否定するから嫌だ」と。「困ったものですね……」。
ですが実際は、ヘルパーがご利用者の都合よりも自分の都合を優先する傾向があることが、ご利用者やそのご家族、また同僚職員など複数のヒアリングなどからわかりました。「自分の想い通りにならないから、自分の仕事を否定された」という表現で不満を言ってきていたのです。
基本的に「不満」というものは「主観的」なものです。当たり前のことですが、本人の言い分だけではなく、客観的に判断、確認することが非常に大切です。
また、職場の人間関係が悪化するとチームワークが機能しなくなります。介護は異職種連携のチームワークが重要ですから、ご利用者にその影響が出てしまいます。スタッフ間の人間関係悪化の兆候は「陰口、悪口、うわさ話」の多さです。これはどこからともなく聞こえてきますし、職場のスタッフの表情や言動から目にみえて悪化していきます。
ある施設では、「たばこを吸うための小休憩」で複数のスタッフが集まると悪口で盛り上がっている、そんなこともあったため、たばこの小休憩時は原則1人にする、という規則ができてしまったような例もありました。仕事は好き嫌いでするものではない、ということをしっかりと教育することが大切です。そのためにどうすればいいかについては、また後ほど述べたいと思います。
不満を改善して満足に変換…「振り子の法則」とは?
次に不満の多い項目が「経営方針・経営者」です。これは筆者著書『ビジネスとしての介護』で詳述した「経営理念」の徹底が対応策となるでしょう。
経営者の「想い」が伝わっていないこと、コミュニケーションの不足が不満の原因となっていることが多いのです。不満を解消するには、とにかく「話せばわかる」のです。思いの外、コミュニケーションを多く取ることで比較的早く解消できます。そしてこれらの不満に対して、もう一つ重要なのが「スピード感」です。
不満に対して対応のスピードが遅いというのは、想像以上に相手の不満を増大させ、「不満」から「不信感」に進化させていきます。「不信感」に進化してしまうと、その解消には多大な時間を要します。速い対応で「不信感」にならないようにすることも忘れてはなりません。
よく不満は「改善への宝」と言います。「振り子の法則」という言葉があります。「快」という感情を味わうためには「不快」という感情が必要なのです。振り子の「不快」という感情が大きければ大きいほど、その反動で振り子は大きく振れます。その反対は「快」というゾーンです。「快」という感情が大きければ大きいほど、大きな「快」を味わうことができるというものです。
不満を改善することで満足に変換することができます。その対応が適切であり、誠意ある態度の改善は、場合によっては「大満足」「ファン」にすることも可能です。不満を満足に変えることができれば、結果としてその職場は非常に楽しく、やりがいのある職場になるはずです。