「根拠のない」値動きの謎
値動きの予想に、過去の事例が有効に働くというのが株式投資の特色ですが、時には理論的な根拠のない、不可解な値動きをすることがあります。こうした事象をアノマリーといいますが、株式関連のSNSでは、しばしば話題になります。
例えば2015年2月13日。千葉県を拠点とするディスカウントチェーンの【3080】ジェーソンの株価が上がりました。しかし、好材料となるようなニュースはありませんでした。こうした場合、Yahoo! のリアルタイム検索などを使うと、個人投資家が理由を推測している場合があります。このときも、「13日の金曜日」とつぶやいている人がいました。ホラー映画の『13日の金曜日』の殺人鬼ジェイソンからの連想ではないかという推測です。
本当に「13日の金曜日」だから上がったかどうかはわかりませんが、面白いので私が記事にしたところ、翌3月の13日の金曜日の2日前から早くもジェーソンは動意づきました。その次の13日の金曜日は本書が刊行される2015年11月。どうなるのか、楽しみですね。
こういうアノマリーも、ネットで探すといろいろとネタが出てきます。
ゴム製品の【5122】オカモトは、産業用資材が事業の主なのですが、一般的にはコンドームのメーカーとして知られています。そこで、2015年8月3日に同社の決算短信が出た後、オカモトの好業績につれ高して、同じくコンドーム製造の【5194】相模ゴム工業が値上がりしました。
オカモトの好業績の理由としては、確かに同社の決算短信には、中国向けが好調と書いてありました。それが、ネットで「コンドーム=インバウンド消費に強い」と、まことしやかにささやかれたことが、相模ゴム工業にまで、値上がり効果が波及した原因だと思われます。一社の決算短信に好材料と解釈できる情報が出ると、同業他社の株まで上がっちゃうこともあるのが、株なんです。
名前に注目したい「受賞」に関わるアノマリー
いろいろなアノマリーがあるなかで、メダルや受賞は、事前にある程度予測ができて、瞬間的に上がる効果があります。
古くは2006年のトリノ冬季オリンピックでフィギュアスケートの荒川静香選手が金メダルを取ったとき、単なる名前つながりで【4968】荒川化学工業の株価が上がりました。また、なでしこジャパンが2015年の女子ワールドカップ大会で活躍した際、川澄奈穂美選手との名前つながりで【7703】川澄化学工業が上がった例もあります。
このように、オリンピックやワールドカップで選手が活躍すると、名前が同じ会社や中小型株が上がるという例は、よく見られます。ほかにも、WBC(ワールドベースボールクラシック)の出場選手名などはチェックしておきたいですね。
また、国際的な賞といえばノーベル賞。【7701】島津製作所の田中耕一氏がノーベル化学賞を受賞することが決まった際は、同社の株価が急騰しました。一方、2015 年10月5日に北里大学特別栄誉教授の大村智氏がノーベル生理学・医学賞に選ばれた際は、翌日に【3953】の大村紙業が名前つながりで買われました。ノーベル賞は、毎年、発表前に候補者が予想されますので、その段階で関連しそうな銘柄を調べておくのがよさそうです。
また、ここ数年、毎年のように
「今回こそ文学賞受賞となるのでは」
とささやかれるのは、小説家の村上春樹氏。2015 年も受賞とはなりませんでしたが、村上春樹受賞期待で、ここ数年は、毎年10月に【9978】文教堂グループホールディングスの株価が値上がりする傾向があります。
面白いのは、2015年上半期の芥川賞をお笑い芸人の又吉直樹氏が受賞した際に上がったのも、同じく文教堂でした。となると、
「誰か話題性のある人が文学賞を受賞すると、儲かるのは文教堂」
という刷り込みが市場にできているということ。次にノーベル賞や芥川賞・直木賞の文学賞の事前予想で注目の名前が上がったら、文教堂の株価をすぐにチェックしておくのがよさそうです。