物価変動にも「強さ」を発揮するアンティークコイン
価値の安定性という面でいえば、物価の急激な変動の影響を受けにくいことも、アンティークコインの利点の一つです。
近年、日本では経済政策の一環として前年比2%の物価上昇率が目標に掲げられています。このインフレ施策が現実になったときに起こるのは、現金価値の相対的な目減りです。現在、預貯金では年率1%にも満たない超低金利が続いています。物価上昇率が預貯金の利率を上回ってしまった場合、特に日本においては金融資産に占める現金・預貯金の割合が大きいため、大幅に資産価値が毀損されることが懸念されているのです。資産防衛のため、株やFXなどへの投資による運用が必要だと考えられているわけですが、投資には常に元本割れのリスクがともないます。ましてや、先に述べたように世界情勢の先行きが不透明な中では、何がきっかけとなって相場が下落するかわかりません。金融資産に不安が募る中で富裕層が辿り着くのが、安定運用できる現物資産、アンティークコインなのです。
アンティークコインの価格がどのように決まるかは、先述したとおりです。外部要因による影響をほとんど受けず、しかも世界中で常に取引が行われているため、一国の通貨価値が目減りしたとしてもコインの資産価値が落ちることはありません。
実際にハイパーインフレが起こった際に、アンティークコインで富裕層が資産を守り抜いた逸話があります。1920年代、ドイツで極端なインフレが発生しました。当時、インフレの予兆にいち早く気づいた資産家の一部は、あらかじめ現金でアンティークコインを大量に購入。その後、バケツいっぱいの紙幣でパン一個さえ買えないほど現金の価値は大暴落したわけですが、世界中で活発に取引されているアンティークコインの資産価値は落ちることがありませんでした。現金をコインに換えておくことで、資産家たちは見事に資産を守ったのです。
また、極端な例ですが、2000年代に入ってからもアフリカのジンバブエでハイパーインフレが発生し、ジンバブエ・ドルが通貨として廃止されました。そして、日本でも財政破綻への不安から円の価値が大暴落するのではといった懸念が、一部のメディアで報じられることもあります。
いずれにしても、世界中が先行き不透明で何が起こるかわからない現代において、あらゆる事態に備えられるアンティークコインの「強さ」は、他の資産と比較しても際立っていると言えるでしょう。
[図表1]
「新国際通貨」といわれる理由とは?
アンティークコインは300年ほど前から世界中で取引されているため換金性が極めて高く、売却することでユーロや米ドル、日本円がすぐに手に入るため、世界のどこでも通用する「新国際通貨」ともいわれています。
貨幣経済の中では、いくら資産価値が高くても現金化できなければ意味がありません。たとえば3000万円の値がつく骨董品を所有していても、すぐに売却できなければ使いようがありません。その点、世界中に買い手が存在するアンティークコインであれば、オークションを利用すればすぐに売りに出すことができますし、より早く売却したければディーラーに直接売るという手段もあります。
もちろん、他の投資家やディーラーなど、より安い価格で手に入れたいと考える人がいる以上、早く売りたいと焦るほどに「足元を見られる」こともあるでしょう。しかしアンティークコインの価格基準は非常に明確で、極端な安値を付けられるリスクは比較的低いと言えます。
アンティークコインの市場価格は、世界各国で発行されているカタログに明記されています。それも業者間でしか出回らないものではなく、アンティークコイン取引の歴史が長いイギリスなどでは街中の小さなキオスクにも置いてあるほど、誰もが手軽に入手できるものです。これらの資料によって価格が公開されていることと、書籍『あなたも虜になるアンティークコイン』Part4で詳しく説明する客観的な鑑定基準があることで、不当な安値を付けられないようになっているのです。
仮に一部で不当な売買が横行するようになってしまうと、作為的に取引価格を上下させることが可能になってしまい、市場の信頼性が損なわれてしまうでしょう。たとえば株式市場などでは日々数えきれないほどの売買が行われており、ひとつの銘柄が乱高下することがあります。莫大な資金力を持つ投資家の中には投機的に多額の売買を「仕掛ける」トレーダーも存在し、儲けるだけ儲けたらさっと資金を引き揚げて、遅れをとった投資家が大暴落に巻き込まれるといったことも珍しくありません。そのようなことを防ぐために、アンティークコイン業界全体で取引の透明性を保つ努力がなされているのです。
未来の予測ではなく歴史という過去の事実をもとに価値が決まるアンティークコインには、株式のようにトレーダーの思惑や計算が入り込む余地がほとんどありません。そういう意味でも投資家にとって極めて信頼性の高い資産だと言えるでしょう。
[図表2]ウナとライオン5ポンド金貨1839年造/38㎜
[図表3]