歴史的な価値を持つ古銭「アンティークコイン」
知る人ぞ知るコレクターズアイテムだったアンティークコインが、近年、世界中の富裕層から注目を集めています。
アンティークコインを明確に定義するのは難しいのですが、簡単に言えば「歴史的な価値を持つ古銭」です。古くて希少性が高く、デザイン性に優れていて人気があり、かつ保存状態の良いものには非常に高い付加価値がつきます。物品の売買などで一般に流通している硬貨などはアンティークコインではありません。歴史に裏打ちされた価値がプラスされて初めてアンティークコインと呼ばれるということです。貴重な文化財ともいえる存在で、現存枚数がごく限られたものでは素材自体の何十倍、何百倍もの価値が付与されている場合も少なくありません。
特に価値が高いのは1500〜1800年代の欧米のコインです。当時の貴族に配られた記念硬貨や、鋳造枚数が非常に少ない貨幣など、様々なコインがコレクターの間で日々取引されています。200〜500年にもおよぶ激動の時代を乗り越えてきたコインは、時価数千万円、数億円の値がつくことも珍しくありません。たとえば1839年にイギリスで発行された5ポンド金貨、通称「ウナとライオン」は、発行枚数400枚と希少性が高く、保存状態次第で2000万円を優に超える人気コインの代表格です。
アンティークコインが今では富裕層がこぞって欲しがる投資対象になっている――その主な理由は、鉄壁ともいえる資産保全効果にあります。本連載では、資産価値とその保全効果にスポットを当てて、アンティークコインの魅力を紐解いていきましょう。
金融市場の動向に左右されない安定した資産価値を持つ
株や債券、外貨など多額の金融資産を保有する富裕層にとって、金融市場の乱高下による影響は極めて甚大です。リーマン・ショックやチャイナ・ショックのような金融危機が起きた際には、様々な金融商品の相場が世界的に大幅下落しました。2008年、リーマン・ショックの震源地となったアメリカでは、ニューヨークのダウ平均株価がわずか1日で777ドルもの大暴落を記録。その影響はアメリカ国外や株式以外の相場にも波及し、世界中の投資家が大きな損失を被りました。
グローバルに各国の経済が連動する現代においては、どこで何がきっかけとなり相場が動くか予測困難です。リーマン・ショックを端緒とする世界的な金融危機は峠を越えたと言われてもいますが、まだまだ予断を許しません。
2016年には国民投票によってイギリスがEU離脱へと動きだし、2017年1月にはアメリカ大統領にドナルド・トランプ氏が就任するなど、経済情勢を大きく左右する出来事は間断なく続いています。
しかしこのような状況においてさえ、何が起きてもほとんどその価値を落とすことなく、むしろ一貫して相場が上がっていくと目されているのがアンティークコインです。
アンティークコインの相場は他の金融資産と異なり、世界の政治、経済情勢の影響をほとんど受けません。
価値が下がらない理由の一つには、コインが短期的投機対象ではないことが挙げられます。たとえば市場自体が極めて巨大で、投資家の志向も様々な株式市場には、短期売買で利ザヤを狙うトレーダーが多数存在します。そのため、何らかの理由で価格下落の気配が出てくると、損失を最小限に抑えようとするトレーダーたちの売りが相次ぎ、急激に値下がりすることが多くありますが、アンティークコインの場合はそのようなことがありません。
アンティークコインの相場価格は、コイン専門業者の評価やオークションでの平均落札額が指標となって決められます。そしてオークションでの値付けや鑑定評価のもとになるのは、コインの「希少性」と「保存状態」、そして「人気(買い手の多さ)」です。アンティークコインは、もともとの発行枚数が市場で取引される数の上限となるため、供給過剰になって価値が失われるということがありません。むしろ需要が高まっている昨今は基本的に値上がり傾向にあります。
値下がりの心配がなく、時間が経つほど価値が高まっていく資産であるため、当然ながら投資家は滅多なことでは売却しません。また、コレクション性も高く、愛着の湧いたコインを簡単に手放すコレクターは少数です。そのため売りに出される枚数が少なく、常に一定の需要があるため大幅な価格の下落はほとんどありません。
現状では、資産としてのアンティークコインの人気が徐々に高まり、それにともなって相場もしばらく上がっていくと考えられます。そして値上がり後も価格が大きく下がるリスクはありません。こうしたことから、アンティークコインへの投資は資産を守り抜くための最適な手段だと言えます。