日本ではアンティークコインの状態を6段階で評価
書籍『あなたも虜になるアンティークコイン』Part1では、客観的な基準が明確で短期間に換金可能であることが、資産としてのアンティークコインの魅力のひとつであると紹介しました。
希少性が高いアンティークコインの評価基準はどのように決定するのでしょうか。これを知っていれば、売却する際だけでなく、コインを購入するときにもどのくらいの価格であれば妥当なのかをある程度まで判断できるようになるはずです。
まず、希少コインの価値を決める基本となる要素は「状態」です。同じコインでも状態のよし悪しでその価値―グレードは一変します。当たり前ですが、コインの状態がよいほど高グレードとされ取引価格が上昇します。
グレード評価は一般的にいくつかの段階で鑑定されます。たとえば、日本では「完全未使用品」「未使用品」「準未使用品」「極美品」「美品」「並品」の6段階に分けられています。ここで注意すべきは、「美品」というランク。言葉のイメージとは異なり、それほどよい状態ではないもののことだからです。
また、6段階の日本のグレードは、決して国際標準ではないことにも注意が必要です。コイン取引の歴史や伝統が長いイギリスでは、FDC、UNC、AU、EF、VF、F、Gの7段階。FDC以外に、プラスとマイナスを加えた計13種にランク付けします。また、後ほど説明しますが、世界的な鑑定会社であるアメリカのPCGSとNGCの鑑定はより細かく、7グレードに1〜70までの数字を組み合わせた評価となります。これは、主観を排し、可能な限り客観的な評価を目指した結果です。実際の具体的なグレードについては下記図表をご覧ください。
[図表]
「現存枚数」や「環境」もコインの取引価格を左右
じつは取引価格を左右する基本条件であるコインの状態以上に重要な要素も存在します。それは、現存枚数です。
ここで問題になるのは、造られた数である鋳造枚数ではなくて、現存数、つまり残っている枚数です。鋳造国の情勢変化で国外へ流出して失われてしまったり、後世に改鋳のために溶かされてしまったりなど、さまざまな事情で現存数が少なくなれば、当然希少価値が付くことになります。
その他、同じコインであっても鋳造された土地や年号といった「環境」によっても価格は左右されます。
コインの売買に際しては、少なくともこれらのことを念頭に置かなくてはなりません。ただし、コイン収集の世界に足を踏み入れたばかりでは、それだけの諸条件を頭に入れるのは至難の業です。入門したてのころは、アドバイザー―コインを販売しているディーラーなどの意見をもとに投資や収集の方針を決めていくのが、もっとも確実な収集方法であると考えられます。