前回は、永続的な病院経営が地域社会にもたらす影響に取り上げました。今回は、経営力を落とさず、病院を承継するのに必要な準備期間について見ていきます。

病院の承継は「リレーのバトンパス」をイメージ

病院の承継で代替わりするときは、シームレスな引き継ぎをしていただきたいものです。

 

「今日、子に承継して明日から自分は病院に来ない」というのでは、後継者も不安ですし、従業員や患者も戸惑ってしまいます。その不安や戸惑いは必ず経営の不安定となって現れます。

 

陸上のリレーのバトンパスのときには、走者のスピードを落とさないようにバトンゾーンがあります。バトンゾーンでは前走者も次走者も一緒に走りながら、タイミングを合わせてバトンを受け渡しします。

 

病院の承継でも、ぜひ引き継ぎの期間を設けて、経営力を落とすことなく確実にバトンパスをしていただきたいのです。

承継の準備は「5~10年のスパン」で考える

一般に事業承継には5~10年の時間が必要といわれています。病院の規模や経営状況などにもよりますが、後継者選び、育成、後継者を中心とした新しい組織の体制づくりなどをするのに早くても5年ほどかかります。これに加えて入念な税金対策、資産移転などをしようと思うと、10年くらいはかかってしまいます。

 

5~10年のスパンで承継の準備をしてください。そして、実際の診療もしばらくは親子で行うことをおすすめします。親は毎日病院に来なくても構いません。最初は2日に1日、後継者が慣れてきたら3日に1日、週1日・・・というように、少しずつ病院に来る日や時間を減らしていき、緩やかにフェードアウトしていくのが理想です。「気づいたら、前院長がいなくても大丈夫になっていた」と後継者や従業員たちが言うくらい、自然な形で承継ができるといいでしょう。

本連載は、2016年5月27日刊行の書籍『相続破産を防ぐ医師一家の生前対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続破産を防ぐ 医師一家の生前対策

相続破産を防ぐ 医師一家の生前対策

井元 章二

幻冬舎メディアコンサルティング

医師一家の相続は、破産・病院消滅の危険と隣り合わせ 今すぐ準備を始めないと手遅れになる! 換金できない出資持分にかかる莫大な相続税 個人所有と医療法人所有が入り乱れる複雑な資産構成 医師の子と非医師の子への遺…

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