出資持分は、株式のように「余剰金」を配当できない
次に、「出資持分の譲渡」に絡む問題です。医業承継では、出資持分を後継者に譲渡しなくてはなりません。
出資持分というのは、株式会社でいうところの持ち株に当たります。保有する株式の割合が大きいほど、会社の資産に対する権利(財産権)も大きくなるのと同じで、出資持分を多く持つほど、医療法人の資産を多く持つことになります。ですから、後継者にはなるべく多くの、理想としては100%の持分を譲渡したいと考えるものです。
ただし、出資持分には株式と大きく異なる点があります。それは「株式のように余剰金を配当することができない」という特徴です。利益を配当という形で吐き出すことができないため、内部保留がどんどん増えていく一方になります。つまり、利益を多く上げている医療法人ほど、出資持分の評価が高くなってしまうのです。
医療法人の立ち上げ当時は1持分が1万円だったものが、数十年後の相続のときには100万円になっているということも珍しくありません。
出資持分5億円を一度に生前贈与すると・・・
持分を譲渡する方法には、①相続での譲渡、②生前贈与での譲渡、③売買による譲渡がありますが、いずれにしても譲渡するときにお金がかかります。仮に後継者の子が出資持分5億円を相続すると、相続税率が50%の場合、2億5000万円の相続税を負担することになります。
出資持分5億円を一度に生前贈与する場合は、最高税率の55%(控除額640万円)が適用されるので、2億6799万円の贈与税がかかります。買い取りをする場合には、5億円のキャッシュを調達してこなくてはなりません。
はたして、後継者の子がそれだけのお金を用立てられるでしょうか。出資持分は「一部を売却して現金化する」ということもできませんから、納税資金にはなり得ません。現実問題として、子が負担するのは不可能に近いことがお分かりいただけるでしょう。
この話は次回に続きます。