小規模の医療機関の8~9割が後継者不在
開業医が抱えやすい問題の4つ目として、「後継者不在」があります。
帝国データバンクの「後継者不在企業の実態調査(2011年11月26日)」によると、後継者不在の「無床診療所」は90.3%、「有床診療所」は81.5%、「歯科診療所」は89.3%となっています。小規模の医療機関の8~9割が後継者不在の問題を抱えているのです。
[図表]後継者不在企業の実態
医療法人の承継は、原則として承継する相手が医師免許を所有していなくてはなりません。これが後継者の確保を難しくしています。今は医学部の競争率が上がり、医師の子だからといって簡単には医師になれない時代です。また、医学教育の「2023年問題」もあります。
2023年以降、医学部の教育システムやカリキュラムが変わります。日本の医師の臨床スキルを国際基準に合わせるために、学部生のうちから臨床実習を増やし、実技を評価するようになります。
簡単にいうと、〝医学部を出てすぐに現場で活躍できる医師〟だけを選りすぐって社会に送り出すしくみです。これにより、医大や医学部に入っても医師になれなかったり、医師になるのにこれまで以上に時間がかかったりする学生が増えることになります。
こうした流れから、今後さらに「子を後継者にしたくてもできない」という開業医が増えることが予想されているのです。
持分なしの医療法人が解散すれば、資産は国のものに…
また、後継者がいる場合でも、親子で診療科目が違うと承継が困難になります。医師の子が親の病院を継ぎたがらないケースもあります。都会で病院勤務をしている子が「田舎に戻るのは嫌だ」と言い出すとか、「経営ストレスのかかる開業医より、生活の安定した勤務医でいたい」と言うなどの例が多々あります。
後継者がおらず承継ができない病院は最悪、解散するほかありません。持分なしの医療法人が解散になると、法人の残余財産は国庫に帰属することになります。病院を失うだけでなく、大切に積み上げてきた利益が自分のものにならないというのは、悔やんでも悔やみきれないものでしょう。