日本の電力事情と比較し、理解を深めることが目的
〈第3回・第4回〉世界の電力事情を知る(2015年6月3日・17日)
――フランス、ウクライナ、オーストリアの現状と課題を比較
第2回講座において、生徒たちは、原子力や火力、再生可能エネルギーなど各発電方式について調べ、その基本的な仕組みやメリット・デメリットを比較して理解した。次は、日本以外の世界の国々が、どのようにして電力を供給しているのかにスポットを当て、比較を通して日本との相違点について、理解を深めようとした。
やはり今回も、生徒10名を3つのグループに分け、それぞれのグループで電力事情を調べる対象となる国を決定した。ただし、今回は、どの国について調べるかは議論を通して生徒たち自身で決めてもらうことにした。
「シェールガス革命」によってエネルギー供給事情が劇的に変化したアメリカ、急速な経済発展と人口の爆発的増加によって電力が恒常的に不足している中国やインド、福島第一原発の事故直後に国内の「原発ゼロ」方針を決定したドイツ、日本の原発技術に大きな関心を寄せるトルコ――。
さまざまな国が候補として挙がるなかで、生徒たちが調べることにしたのは、フランス、ウクライナ、オーストリアの3カ国であった。
原発に高い関心と問題意識を持つ生徒たち
この3カ国に焦点を当てた生徒たちの鋭い感性には、再び驚かされた。ここには、彼らの原発に対する高い関心と問題意識が反映されている。フランスの電源構成は、世界でもかなり特徴的であり、原子力からの供給が8割近くに達する。
このこと自体は「現代社会」や「地理」の教科書でも扱われているが、では一体、なぜそこまで原発への依存度が高いのか。また、福島第一原発の事故後も、その傾向にほとんど変化がないのはなぜか。
一方、ウクライナには、1986年に爆発事故を起こして世界的な放射能被害をもたらしたチェルノブイリ原発が立地する。福島第一原発の事故をも上回る、
世界最悪の原発事故はどのようにして起こったのか。そして、現在のチェルノブイリはどうなっているのか。また、オーストリアについては、憲法で原発の新規建設を禁止した点が生徒の興味を引いた。
国の最高法規である憲法にまで脱原発を書き込んだ理由は何だったのか。その後、オーストリアは、どのようにして電力を供給しているのか。生徒たちから、このような問いが次々と発せられた。
10年後、20年後に日本の未来を背負う者として、他国の電力供給の実際から真摯に学ぼうという気概のようなものがひしひしと感じられた。