講座の探究活動を通して「客観的な視点」を育む
〈第2回目〉発電の仕組みを理解する(2015年5月22日)
――アクティブ・ラーニングによる発電方法の基礎知識習得
「原子力」「火力」「再生可能エネルギー」第2回目では、発電方式に関する基礎的な知識を習得することに焦点を当てた。具体的には、事業用発電の方法について、その構造やメリット・デメリットについて調べるというものである。
前時に生徒10名を、あらかじめ「原子力」「火力」「再生可能エネルギー」の3班に分け、第2回目までに各自が担当する発電方法について調べ、発表できるようにしてくるよう指示した。
講座「徹底研究!日本の電力問題」を立ち上げるにあたって筆者が意識したことのひとつは、「電力について可能な限り知識を習得し、正確に理解したうえで議論する」ということである。
この講座の探究活動を通して、思い込みや偏見をできるだけ排除し、複数の文献や資料、情報にあたり、客観性を担保しながら知識を積み上げたうえで議論をする、という社会科学的な姿勢を学んでほしいと考えた。
こうした姿勢は、電力問題に限らず、生徒たちが将来各界において、リーダーとして職業人生を歩むうえでも、必要不可欠な知的スキルであると考えている。
さて、前述の指示をしてから2週間後、まず「原子力」「火力」「再生可能エネルギー」の各班で集合して、各自が調べてきたことの情報交換を行った。このとき驚いたのは、生徒たちのリサーチ力の高さと真剣さである。
原子力発電プラントや石炭火力発電プラントの概念図をノートに詳細に図示してきた生徒、再生可能エネルギーの種類を可能な限り列挙してきた生徒、バイオマス発電に特化して、その特徴を徹底的に調べてきた生徒など、さまざまな切り口で調べてきていたが、そのどれもが真剣に、この問題に取り組んでいる姿勢がうかがえ、感嘆に値するものであった。
生徒たちは、文系・理系の混在するグループ内でやりとりするなかで、各発電方式の「エキスパート」としての知識と理解を深めていったようである。
ジグソー法を活用し、3つの発電法の長所・短所を探る
次に「原子力」「火力」「再生可能エネルギー」の3班をいったん解体して、この3方式の担当者が混在する3つの班に再編成した。前時にも活用した「ジグソー法」である。エキスパートとして担当した発電方式を他方式担当のメンバーに詳しく説明することで、結果として10名全員が3つの発電方式すべてについて理解を深めることを狙った活動である。
「原子力」「火力」「再生可能エネルギー」という電力問題を考えるうえで欠かせない3つの方式について、その仕組みや長所・短所を、生徒たちは、仲間の言葉を介しつつ複眼的に理解することができた。
以下、生徒たちが実際に調べてきたことのいくつかを列挙する。
〈原子力発電〉
●人口密度の低い大河川沿いや臨海部に多く立地する。
●ウラン235に中性子をぶつけて核分裂を起こし、その際、発生する膨大なエネルギーで水を沸騰させ、その水蒸気で発電タービンを回す。沸騰水型(BWR)と加圧水型(PWR)の2つのタイプがある。
●大容量の発電が可能だが、こまめな出力調整は困難。常時最大出力で供給するのが基本。
●燃料となるウランは、埋蔵量も多く、価格も比較的安定している。
●発電の際に必ず生じる放射性廃棄物の処理方法が確立されていない。
●いったん重大事故が起きると、チェルノブイリや福島の例が示すように、その被害は甚大で、周辺地域への居住もできなくなる。
●放射線の身体への影響は不明な部分が多い。
〈火力発電〉
●大規模なものから小規模なものまであり、電力消費の多い大都市にも多く立地している。
●石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料を燃やして水を沸騰させ、その水蒸気でタービンを回転させる。
●国際的な資源価格の変動によって、発電コストが大きく左右される。
●燃料を燃やすと、多くの二酸化炭素、硫黄酸化物および窒素酸化物を排出し、地球温暖化や大気汚染の原因となる。
〈再生可能エネルギー〉
●太陽光、風力、バイオマス、地熱など、化石燃料に頼らずにエネルギーを得ることができる。
●環境に与える負荷が小さい。
●発電容量が小規模で効率が悪い。
●太陽光や風力は、天候によって供給が左右されやすい。