ビットコインへの懐疑を深めた事件だったが・・・
ビットコインを怪しいと思っている人の多くは、2014年に発生した、いわゆる「マウントゴックス事件」の印象が強いかもしれません。
2014年2月24日、当時、ビットコイン取引所として世界最大級の取引量を誇っていた、東京・渋谷に本社を置くマウントゴックス社が突如、全取引を停止しました。同社は同月28日には民事再生法の適用を申請すると、衝撃的な発表をします。
なんと、顧客の預かり資産約75万BTCと現金約28億円がなくなったというのです。
当初、同社のフランス人社長は「ハッカー攻撃を受けた」と主張しましたが、のちにその社長による横領が判明し、逮捕されました。
この事件は日本が舞台だったこともあり、テレビや新聞など連日報道され、日本人に大きなインパクトを残しました。この事件が多くの人に「仮想通貨なんて怪しい」と強く印象づけてしまったのです。
国に「決済通貨」として認められているビットコイン
しかし、この事件はビットコインそのものの安全性に問題があって、起こったわけではありません。端的にいえば、マウントゴックスの社長が顧客から預かった資産を盗んだというモラルハザードが原因です。
横領事件はたびたびニュースになります。マウントゴックス事件で起こったことは、よくある横領事件で日本円がなくなったのと同じことです。
しかし、日本円の横領事件が起こって、「日本円は怪しい」とその安全性を疑う人はいません。ビットコインが横領されると、なぜその安全性が疑われるのでしょうか。
それはビットコインがこれまでの既成概念を超えた理解しがたい存在であるために、すぐに受け入れられないというある種の拒絶感が大きいからでしょう。日本円をはじめとする法定通貨は盗まれればなくなってしまいます。仮想通貨も盗まれればなくなってしまうのです。盗まれてなくなる点で、ビットコインは通貨的であるといえるかもしれません。
みなさんも日本円を安全に保管するため、銀行に預けたり、金庫に入れたりしているはずです。持ち歩くときは財布を落とさないように注意しています。
ビットコインはデジタルデータですが、盗まれないためにパスワードなどを人に知られないようにセキュリティーを考えなければいけないことは同じです。
マウントゴックス事件から数年経ち、徐々にビットコインの安全性が原因ではなかったことが理解されるようになって、「ビットコインは怪しい」という人が多かった状況は急速に変化しつつあります。
2017年4月1日には、改正資金決済法が施行され、国も決済通貨のひとつとしてお墨付きを与えました。すでに「ビットコインを怪しい」とするのは時代錯誤になりつつあるのです。