今回は、投資信託のパフォーマンスが代表的な指数と乖離する理由を見ていきます。※本連載では、毎年1000を超えるファンドを分析する投信評価会社に所属する「投信のプロ」が、投資信託の基礎知識を世界一わかりやすく解説します。

過去データからも収益獲得が期待できる長期投資

私たちが投資信託を選ぶ際によく目にするパンフレットやホームページには、主要な資産の価格の動きが示されたグラフが掲載されています。そこには資産の動きを代表する指数が用いられています。日本株式ならTOPIX(東証株価指数)、外国株式であればMSCIコクサイ(日本を除く先進国を対象とした指数)と呼ばれる指数などがこれにあたります。これらの指数は、投資信託を運用する際のベンチマーク(運用の指標)としても用いられています。

 

代表的な指数を用いてその動きを示したいところですが、使用上の制約等があるため、ここでは指数に連動することを目指す実際のインデックス型ファンドを用いて価格の推移をみてみましょう。

 

よく言われているように、投資対象資産の価格は変動を伴いますが、長期間でみれば資産の成長による価格の上昇がみられます。

 

図表1では、スタート時期はITバブルがはじけた時期でもあり、特に株式指数は伸び悩んでいるようにみえますが、それでも最近は世界的な金融緩和や米国新政権の政策期待などから堅調に推移しています。これらの動きからも、実際に長期投資は収益の獲得が期待できることがわかります。

 

[図表1]主要資産の長期推移(インデックス型ファンド)

インデックス型ファンドの動きと比較してみると…

それでは、私たちは図表1でみたような投資成果を得ているのでしょうか? 残念ながらその答えは「否」です。これについては様々な見方がありますが、ここでは三菱アセット・ブレインズが算出している投信指数「MAB 300」を用いて確認してみましょう。

 

最初にこの指数を簡単に説明しておきますが、投信指数「MAB 300」は、投資信託の純資産残高の上位300ファンドの価格の動きを束ねて指数化したものです。私たちがニュースでよく耳にする日経平均株価指数は、日本株式の代表的な225社の株価の動きを指数化しているものですが、その投資信託版のイメージです。

 

図表2は、MAB 300指数に含まれるファンドのうち、外国債券ファンドと外国株式ファンドをそれぞれ束ねて指数化したものを先ほどのインデックス型ファンドの動きと比較したものです。冒頭にお話ししたように、TOPIXなど市場全体の動きを示す指数は使用上の制約があるため、インデックス型ファンドで代替しています。

 

これをみると、市場全体の動きに対してMAB 300の各指数は大きく下回っていることがわかるでしょう。MAB 300に含まれるファンドは日本の投信市場の残高上位300ファンドなので、よく売れているファンドと言い換えることもできます。つまり、私たちは投資信託に投資をすれば、その資産と同じようなリターン(投資成果)が得られるものと考えますが、現実には必ずしもそうなってはいないのです。

 

[図表2]外国債券と外国株式の投資信託の長期推移

<外国債券>

<外国株式>

ファンドごとの運営費用等も収益に大きく影響

この背景には様々な要因があります。

 

まず、ファンド運営にかかる費用の影響があります。保有する期間にわたりファンドから差し引かれる費用が高ければ、それだけ収益は低くなります。また、ファンドの運用実績の良し悪しも反映されます。資産全体の動きよりも高いリターンを得られればよいのですが、運用がうまくいかなければ収益性は劣ります。

 

さらに言えば、MAB 300指数の性格上、ある程度大きな残高に育ったファンドのリターンを計測しているので、残高が大きくなってから(つまり市場で人気が出た後に)ファンドを購入することがリターンにとってはプラスになりにくい可能性も示しています。

 

図表2の価格推移に差が生じているのは、主にこれらの影響がミックスしたものです。もちろん、図上のMAB 300指数は300ファンドを集計した値なので、ファンドの中にはリターンの良いもののあれば悪いものもありますが、これらの状況から言えることは、投資市場の参加者の多くは想定したほどのリターンを得られていない可能性があります。

 

投資した対象資産の動きは、ネットなどで確認することができますので、代表的なインデックス型ファンドのリターンと比較することもよいでしょう。投資信託のファンドの収益性は意外と大きな違いがあるものです。ファンドを購入したのちも、自分が保有するファンドのリターンだけでなく、それが全体の動きと比べてどうなのか、自分が想定したような動きをしているのかを確認することは大切な作業なのです。

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