今回は、投資信託選び・・・各ファンドの「分配余力」をどう考えるかを見ていきます。※本連載では、毎年1000を超えるファンドを分析する投信評価会社に所属する「投信のプロ」が、投資信託の基礎知識を世界一わかりやすく解説します。

分配金が毎月支払われるファンドが好まれてきたが・・・

分配金を期待して投資信託を購入する人がいます。特に高齢者では、毎月にもらえる分配金を楽しみにしている人も多く、それがファンドを選ぶ際の基準にもなっているようです。そういった人のなかには、分配金をお孫さんに渡し、お小遣いにしているとも聞きます。

 

このようにみれば、分配金の高いファンドも、しっかりとしたニーズがあります。日本の金融機関で販売されている投資信託(公募販売)は約60兆円ありますが、そのうちの6割以上は毎月(年12回)分配を支払うための仕組みを持ったファンドです(図表1参照)。それだけ毎月分配金が支払われるファンドが好まれてきた証しでもあります。

 

[図表1]公募投資信託における決算回数別の構成

 

こうしたなかで、分配金が多いことの仕組みをわかって投資しているのなら良いのですが、未だに分配金の多いファンドを、収益が良好なファンドとみなしている人はかなりいます。色々と言われ続けていることではありますが、投資信託は資産形成に資する金融商品である以上、投資信託を語るうえでは、この点についてどうしても触れないわけにはいきません。

 

債券や株式を実際に買ったことがある人はわかるのですが、債券を直接に購入すると、クーポン分が利息として得られます。株式の場合には、収益のなかから株主への配分として配当が支払われます。赤字でも配当が支払われるケースを「タコ配」と呼びますが、これは滅多におこなわれない行為です。

 

それに対して投資信託の場合には、その期間に得られた収益以外にも、多くの分配金を支払うことができる仕組みになっています。当期の収益に加え、過去から積み上げた収益や、途中からファンドに投資した人と古くから投資している人の公平性を図るための調整金などが分配金として支払ってよい原資になります。この調整金が分配金をわかりにくくしている根源なのですが、これらをあわせて分配余力とか分配可能原資と呼んでいます。

「分配余力がある=お金が貯まっている」とは限らない

特に、人気があるファンドは色々な人が新たに投資をするので、そのたびに分配可能原資が帳簿上で増えることになります。各ファンドで、分配余力がどれくらいあるのかを確認したいのであれば、運用報告書を見ることです。そこには1万口あたりの分配余力が示されています。

 

ファンドによって異なるのですが、なかには、ファンドの基準価額以上に分配金を支払う余地があるという、理屈にあわないようなことまであります。

 

図表2は実際のファンドです。みなさんが取引する単位である一万口あたりの基準価額は4300円に対し、そのファンドの分配余力(翌期繰越分配対象額)は8647円もあります。基準価額以上に分配金を払うことはできませんから、分配余力とは、収益の積み上げだけではなく、会計上の数字にすぎないのです。

 

[図表2]運用報告書に記載されている基準価額あたりの「分配余力」

この数字をみて、投資信託に慣れている人ですら「まだまだ分配する余裕がある=お金が貯まっているファンド」というふうに取り違えてしまうことが多いようです。今後も分配は継続できますが、お金が貯まっていることと同義ではありません。ファンドから元本を取り崩して分配できる範囲が大きいことを示しているにすぎないのです。

 

こういったことは、ネットで「分配金」と入力して検索すれば、運用会社などが作成した資料があるので気になる人はしっかりと調べてみるとよいでしょう。分配余力が大きいファンドは、収益が積み上がっているかどうかというよりも、この先も支払いを続けられることを示しているための目安です。

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